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つれない幼馴染

本作品はカクヨムにも投稿しています。

 特に会話が弾むことはなく、無言のまま僕らは夕飯を食べ進める。

 この沈黙が気まずくないのは十年来の幼馴染だからか、それとも互いの性格ゆえか──まぁ、多分どっちもあるんだろう。


 安奈あんなは基本的にダウナーというか、積極的に話しかけてくるタイプじゃないし。

 僕もおしゃべりな方ではない。

 そんな僕らはほとんど同じタイミングで夕飯を食べ終えた。


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

「おそまつさま。お皿、水にだけつけといて」

 

 返事はせずに、安奈はお皿を流しに下げて水を張る。

 それからソファに戻ると、そのまま足を組んで座ってくつろぎモードだ。


 僕はといえば軽く食器を洗って食洗器へ。

 そんな流れ作業をしながら、頭の中では食事中に浮かんだ1つの計画について思案していた。


 オタクに優しいギャル育成計画──なんて言葉だけは浮かんだけど。

 安奈をオタクに優しいギャルにする……言うは易し、だよなぁ。


 考えながら、無言でスマホをいじる安奈の後ろ姿をちらりと見た。

 安奈はいつも夕飯を食べた後、ああやって家でのんびりしてから帰る。

 

 テレビを見たりスマホで動画やらSNSを見たり、帰ってからにすればいいのに、とは思うけど口にはしない。

 安奈がいて困ることなんてないし。


 むしろ今はそののんびりタイムは都合が良い。

 学校じゃまともに話すタイミングはないし、メッセージアプリでやり取りすると既読無視されるか雑に流されるかしそうだし。

 問題はどう話を展開してアニメを勧めるか──。


「ねぇ安奈」

「なに?」


 振り返りもせず、安奈は短く応じる。


「今日はカラオケ断ってたけどさ、いつもは行くとどんな曲歌うの?」

「は? いきなりなに」


 今度は振り返って、安奈は怪訝そうに琥珀色の目を細めている。


「なんとなく気になっただけだって」

「あっそ。……まぁ。普通に流行りの曲だけど。J-POPとか」

「YOARUKIとか?」

「そう」

「そっか。僕も友達と行くことあるけど、アニソンとかボカロしか歌わないからなぁ」

「アニソン歌う子もいるけど。動画サイトでめっちゃ再生数伸びてるやつとか」

「へぇ? 安奈も歌うの?」

「歌わない。あんまり聞かないし、アニソン」

「ふーん。アニメとかなんか見てないの?」


 よっし、自然にアニメの話題に繋がった……よな?


「最近はやってるアニメとか」

「あんまり見てない」

「そっか。友達に勧められたりとかは?」

「あんまないし、そもそもあんま話題にならないし」


 まぁ陽キャグループじゃそうだよな。


「あー……でもたまに男子が喋ってるかも。ブルーなんとかってサッカーのアニメの話」

「ブルーパノプティコン?」

「それ」


 背もたれに寄りかかったまま、安奈は頷いた。

 それからスマホに目を落としながら聞いてくる。


「面白いの?」

「面白いよ。作画も良いし、スポーツアニメだから見てて熱くなれるっていうか、熱量がすごいんだよ。見てるとつい体動かしたくなっちゃってさ」

「早口キモっ……」


 ボソッと呟かれた辛辣なツッコミは無視するに限る。


「サブスクで見れるけど、見てみる?」

「やめとく。私サッカー好きじゃないから」

 

 言うと、安奈はソファで体育座りするように足を寄せて、ポケットから取り出したワイヤレスイヤホンを耳につけてしまった。

 こうなるともう完全に拒絶モードで、こっちがなにを言ってもガン無視される。

 

 この状態を解除するには、デザートにケーキやらアイスやらを献上する必要があるけど、生憎あいにく品切れな上に買い物したときに買ってくるのを忘れていた。


 アニメの話題に繋がったからって、がっつきすぎたかもしれない。

 いや、1話をテレビで再生し始めたらちょっとくらい見てくれるか?

 

 ……やめとこ。さすがにくどいと思われそうだ。


「はぁー……」


 先は長そうだな。


 僕は最後の食器を食洗器に入れると、忘れないようにタイマーだけかけて自室に引っ込んだ。

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