妬ましい人たち
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「気に食わん」
昼休み。
中庭の隅っこでお昼ご飯を食べていると、坂本くんが僕をにらみつけてきた。
「えっと……いきなりなに? 気に食わないって、なにが?」
「お前が高瀬さんと仲良くしてることが、だ」
「仲良くって、そんなことないよ。高瀬さんは誰にでも優しいし話しかけてくれるし、別に僕が特別仲良くしてるなんてことは……」
「んなことは分かってんだよ勘違いすんなオタク野郎」
「ひどくない?」
果たしてここまでの暴言を吐かれる非が僕にはあるんだろうか。
あの席になったときに「ツイてない」とか言ってたくせに。
「いーなー。俺も高瀬さんと楽しくおしゃべりできる高校生活がよかったなー」
「じゃあ今からでも変わる?」
「変われるもんなら変わりてぇよ」
「そんなに可愛い人なんですか? 高瀬先輩って」
と、亜麻色のショートボブを傾けて聞いてきたのは久瀬さんだ。
いつも一緒にお昼ご飯を食べてる友達が体調不良で欠席で、購買で顔を合わせた坂本くんに声をかけたらしい。
「久瀬ちゃん、高瀬さんのこと知らないの?」
「知りません。他学年の人のことなんてあんまり知る機会なくないですか?」
「まー部活とかやってなきゃそうかもしれないけどさ。高瀬さんって結構有名人だと思うけどな」
「坂本先輩、私が普段どれだけひっそり生きてるかご存じないんですか? テレビの有名人だって全然分かんないのに、校内の有名人なんてもっと分からないに決まってるじゃないですか」
ふんっ、て胸を張って言う久瀬さん。
自信満々に言われてもってところだけど、実際他学年の人なんてそんなに覚えてないか。
「で、話を戻しますけど。そんなに可愛い人なんですか? 高瀬先輩」
「めっちゃ可愛い。うちのクラスは間違いなく熱莉、高瀬が2強だな。どっちも系統が違うから食い合わないんだよ、需要を」
「需要て」
アイドルじゃないんだから。
「どっかで一度くらい見たことあると思うぞ? 顔と名前は一致してないかもしれないけど」
「ふーん……。隠先輩的にはどうなんですか?」
「どうって?」
「だから、その……」
久瀬さんは眉をひそめ、僕をじっと見つめてくる。
「どう思ってるんですか? 高瀬先輩のこと」
「んー、どうもなにもクラスメイトとしか言いようがないっていうか」
「じゃなくて……!」
怒ってるような、どこか不安そうな、そんな複雑そうな表情を久瀬さんは浮かべていた。
「やっぱり先輩もその、高瀬先輩とか……あとは熱莉先輩? とかが好きなんですか?」
「んー……別に嫌いってことはないけど、好きってわけでも……」
安奈とは付き合いが長いし、幼馴染だし、好き嫌いの物差しで測るような相手じゃない気がする。
もうほとんど家族みたいなものだし、そういう意味じゃ好きって言える相手だと思うけど。
一方高瀬さんはというと、たしかに日常の些細な仕草や言動に可愛いと感じることはあるけど、じゃあ恋愛的に好きかというと別にそうでもない。
「僕なんかには高嶺の花すぎるって」
「ふーん……なら、いいです」
いいですって言ったのに、久瀬さんはそっぽを向いてしまった。
納得してくれたんじゃないの……?
そんな久瀬さんを見て、坂本くんはやれやれと言いたげに首を振る。
「やれやれ……。大変だな、久瀬ちゃん」
言いたげどころか本当に言った。
なに? 僕なにか変なこと言ったかな?
考えても思い当たる節なんてなくて、僕は釈然としないままお弁当の残りを食べることしかできなかった。
他学年の先輩後輩って部活や委員会で関りがない限り、ほとんど知り合う機会なんてないですよね……というのは、陰キャの発想なんですかね?
自分の身の回りの陽キャはインスタなどで知り合っているのか、それとも高校生になる以前から関りがあったのか、他学年に友達の多い人が多かったです。




