油断ならない人
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「──なので、ここの解は──」
「……ねぇねぇ、隠くん」
なんてことない平日の2時間目。
あんまり得意じゃない数学の授業を聞いていると、隣の席の高瀬花那さんが静かに顔を寄せてくる。
綺麗な黒髪が揺れ、青い目がまっすぐ僕を見つめてきた。
「な、なに?」
「安奈がこんなにがっつり寝てるの珍しいね」
ちょっとドキドキしながら応じると、高瀬さんはひとつ前の席の安奈に目を向けた。
彼女の言う通り、安奈は授業中にも関わらず頬杖をついたまま舟をこいでいる。
まぁ、授業中に眠くなるのは僕にも十分覚えがあるというか、全国の高校生誰でも理解できる話だと思うけど。
「安奈っていっつもダルそうに授業聞いてるけどさ、寝てることってほとんどないのにねー」
たしかに安奈が授業中に寝てるところは見たことないかも。
といっても、同じクラスになってまだそんなに経ってないけど。
「安奈って中学生のときもそうだったの?」
「どうだろう? 中学生の頃は──……」
ん? 昔から?
「……僕、高瀬さんに中学のこと話したことあったっけ?」
「んーん? 直接聞いたことはないよ?」
僕の出身中学を知ってるのは、同じ中学だった生徒と1年生の頃に同じクラスだった人たちだけ。
しかも後者はさして関わりのないクラスの陰キャ男子の1番最初の自己紹介を覚えてることになる。
高瀬さんは1年生の時違うクラスだったし、直接はないってことは人づてに聞いたのかな。
「なんかねー、誰かが話してた気がするんだよねー。違ったらごめんくらいの気持ちで言ったけど、安奈と同じ中学だったよね?」
「まぁ、うん。そうだよ」
僕らの関係性を安奈は知られたくないだろうから口にする機会がないだけで、別に隠してるわけじゃない。
とはいえびっくりした。
「あ、でも安奈と同じクラスじゃないと分かんないよね」
「うん。中学生のときは同じクラスになったことなかったから、あんま分かんないや」
「そっか。変なこと聞いてごめ」
「高瀬ー、隠ー。私語は慎むようにー」
と、高瀬さんの言葉を遮るように怒られてしまった。
「はーい」
「す、すみません」
「あと熱莉も起きろー」
先生に声をかけられても安奈は頬杖を崩さない。
これは思ったよりがっつり寝てるな。
「安奈ー……あーんなー」
「……ん、んー……?」
ちょんちょんと後ろから高瀬さんが小突いて、ようやく起きだした。
「珍しいね、安奈が授業中ぐっすりなんて」
「んー? ……あー、まぁ、ちょっと」
「……ん?」
振り返った安奈が、一瞬僕の方に目を向けたような気がした。
……もしかして、昨日あのアニメ見たから寝れなかったとか?
ホラーっていってもガチホラーじゃなかったし、あのときは安奈もインターホンにびっくりしてただけかなって思ってたけど。
結構ガチで怖がってたんだなぁ。
こればっかりは申し訳ないことをしたと思うけど、僕はちゃんと聞いたんだ。
ホラー苦手じゃなかったっけッて。
それなのに意地はった安奈が悪い──って言い方はよくないけど、このことで僕が責められるいわれはないはず。
……はずなんだけど、このことは早めに清算していおいたほうがよさそうだから、今日の夜ご飯は安奈の好物にしてあげよう。
前回から1か月近くも空いてしまってすみません。
公募用の長編を書き始めたり、新たな連載小説を書き始めたりといろいろしていたら後回しになってしまって……。
次回の構想はすでにあるので、さほど時間がかからない内に投稿できる……と思いますので、次回もよろしくお願いします!




