馬鹿にしないで
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「じゃ、流し始めるよ」
「ん」
ソファに2人並んで座って、僕はくだんのアニメを再生する。
するとさっそく画面に映ったのは、カラフルな積み木やおもちゃの置かれた広い部屋。
『……どこ? 夢? なにこれ?』
そんなセリフと共に映ったのは、3Dのアニメキャラ。
といっても人ではなく、おもちゃ箱の中の人形みたいな。
『えっ……えぇ!? なにこれ!?』
鏡に映った自分の姿を見て、言葉通り目を白黒させる女の子。
物理的に目が白黒するのは人形ならではの表現っぽくてちょっと好きだ。
ちらりと隣の安奈を見ると、特にリアクションはしないで黙ってテレビを見ている。
このアニメがどういう話かというと、目が覚めたらおもちゃの人形になってしまった少女が、元の姿に戻るために様々な冒険をするというものだ。
このおもちゃ箱みたいな部屋には他にもおもちゃにされた人たちがいて、部屋の主らしい謎のピエロからの指示でいろんな冒険をしていく。
一見ファンシーな世界観だけど、そのファンシーさを餌に釣った視聴者をジャンプスケアでビビらせる……みたいな、だいたいそんな感じ。
「……なんか、いちいちリアクションが大げさっていうか、身振り手振りが大きいね」
「そうだね。人形やおもちゃの兵隊の姿だから、独特な感情表現ができる分そういう仕草に気合が入ってるらしいよ」
「ふーん……」
序盤はキャラの自己紹介的なパートで進んでいき、話が進んでいくのは後半からだ。
冒険フェーズに入るとホラー要素が増えていって、ここからが本番──だと、思ってたんだけど。
『あそこ、だれか倒れてるよ!?』
『あぁ本当だ。起こしてあげなよ』
『うん!』
『ま、それゾンビだけどね』
『きゃぁぁぁ!?』
「……」
「……なんか、ちょっと意外」
「なに?」
目線はテレビに向けたまま、安奈は短く応じる。
「安奈ってホラー苦手じゃなかった? 昔心霊現象特集のバラエティ見た後1人で眠れなくなって──」
「それ以上しゃべったらひっぱたくから」
「はい」
あ、危なかった。
真冬のような冷気でひっぱたかれる前に凍死するかと思った……。
「……別に、いつまでも子供じゃないんだから、ホラーくらい余裕だし」
ツンと澄ました横顔のまま、安奈はきっぱり言い切った。
まぁそれはそうか。
安奈が1人で寝れないから一緒に寝てって言いだしたの、小学3年生とか4年生とか、そのくらいだった気がする。
あれから何年も経ってるんだから、そりゃあホラー耐性がついててもおかしくな──ピンポーン。
「ひゃっ!?」
「えっ!?」
「……」
「あ、えっとー……」
テレビの音、じゃない。
突然聞こえたインターホンに、というかその音にびっくりした安奈の声に僕も驚いた。
「と、取り合えず出てくるよ」
そそくさと立ち上がって玄関へ。
そういえば通販の配達、時間指定してたんだ。
この時間なら帰ってきてるし、僕が夕飯の支度をしてても安奈が出てくれるから……。
荷物を受け取ってリビングに戻ると、安奈が睨んできた。
なにも言ってないんだけどな。
「違うから」
「え?」
「インターホンの音にちょっとびっくりしただけだから」
「あ、うん。そうだよね」
曖昧な笑みを浮かべて頷くことしかできない。
多分気を張ってたんだろうなぁ……とは、言わないでおいてあげよう。
「えっとー……ちょうど1話が終わるとこなんだけど……2話見る?」
「……またあとで、日があるときにして」
「あ、はい」
ふいってそっぽを向く安奈。
やっぱりまだホラー苦手なんだなぁ……。
今後はホラー要素のある作品についてはちゃんと見せる前に伝えておこう。
次同じ事やったらひっぱたかれるどころじゃすまない気がするから。
そんな危機感を抱きながら、僕は夕飯の支度にとりかかることにした。
大変長らくお待たせしてすみませんでした。
2週間近く体調を崩していたのと、新しい連載用作品のプロット作成を進めていたこともあってかなり間が空いてしまいましたね。
作中のほうはと言いますと、やはり千尋の懸念通りホラー要素がダメダメな安奈ちゃん。
こういうダウナーな子がホラー苦手って、可愛いんですよ。




