いろんな前進
本作品はカクヨムにも投稿しています。
「いやー……。なんか、思ったよりなんともなくてよかったと思うよ、ほんとに」
席替え初日の放課後。
僕はソファでくつろぐ安奈と今日の出来事について話していた。
「あのねぇ……。アンタ、あの2人のことなんだと思ってたの?」
「なにってまぁ、クラスの1軍とか。てっきり僕は馬鹿にされるんだって思ってたんだけど……」
「するわけないでしょ、そんなこと。っていうか、そんなことする奴と友達になんかならないから、私」
呆れ半分怒り半分って感じで安奈は言う。
なんていうか、ちょっと意外だ。
「高瀬さんはともかく、小堀くんも?」
「当たり前でしょ」
「前に小堀くんのことで文句言ってなかった? てっきり嫌いなんだと思ってたけど」
「あー……」
思い当たる節があるのか、安奈はバツが悪そうに目をそらす。
それからため息をついて肩をすくめた。
「まぁ、キモいのは事実。足じろじろ見すぎ。けど悪い奴じゃないから。キモいだけで」
酷い言われようだ。
そんなに目線送ってるようには見えなかったけどなぁ……。
女性は男性の目線に敏感っていうし、やっぱり向けられてる本人にしかわからないなにかがあるんだろうか。
「とにかく、2人ともアンタを馬鹿にするようなことはしないと思うよ。ちょっとネタにしたりからかったりしたり、そういうのはあるかもしれないけど」
「まぁ、それは今日既に起こったね……」
数学の授業を思い出していると、安奈はスマホを見ながらため息をついた。
「ま、そういう絡みがあったほうがアンタも都合がいいんじゃない? 友達になれるかもよ?」
「それ本気で言ってるの? 僕にはつりあわないっていうか、全然タイプが違うよ」
「今この瞬間を見た誰もが同じこと思うと思うけど」
クラス1、2を争う美少女とクラスでも目立たない地味なオタクがひとつ屋根の下、同じソファに隣同士で座ってくつろいでいる。
まぁたしかに、この状況のほうがよっぽど非現実的かもしれない。
僕たちからしたらありふれた日常なんだけど。
──いや、ちょっとだけ違うかも。
ひとつ屋根の下は変わらなくても、つい最近までは会話はあんまりなかった。
まったく話さないわけじゃないけど、1年生のときはクラスが違ったから共有できる話題がそう多くなかったし。
一緒にいすぎたせいか気まずさを感じるようなことはなかったけど。
きっかけは間違いなく、僕が始めた「オタクに優しいギャル育成計画」で、アニメの布教がうまくいったから。
ただ最近はテスト期間だったせいで、進捗のほうはイマイチだ。
ここらでひとつ、新しい作品をなにか勧めてみようかな……。
久瀬さんから教えてもらった作品から見繕ってもいいけど、個人的に勧めたい作品もあるしなぁ……。
なんて思っていると、安奈がスマホの画面を僕に向けてきた。
「ね、これ知ってる?」
「どれ?」
画面を見て、僕は目を見開く。
そこに映っていたのは、海外の3Dアニメ作品だった。
「知ってるけど……え、逆に聞くけど知ってるの?」
「知らないから聞いたんだけど」
「あ、うん。だよね」
安奈はジト目で僕をひと睨みした後、スマホに目線を戻す。
「前に見せてもらったアニメあるじゃん? あれのSNSアカウントをフォローしたら、おすすめに似たようなアニメたくさん出てくるようになっちゃってさ」
「あー、あるよねそういうの」
「で、おすすめでめっちゃ見かけるから気になってるんだけど……面白いの?」
「おぉ……」
「は? なにそのリアクション」
まさか安奈が自分からアニメのことを聞いてくるなんて。
進捗はイマイチだと思ってた計画だけど、そんなことはなかったみたいだ。
「で、どうなの。微妙なの?」
「いや、面白いよ。前見たやつよりちょっと複雑……っていうか、毛色が違うんだけど」
「ふーん……? ここで見れる? 私の入ってるサブスクにないんだけど」
「海外のアニメだとどうしてもねー。まぁ見れるよ。僕の入ってるサブスクにあるから」
「じゃあ見る」
「じゃあ準備するよ」
内心でガッツポーズをしながら、僕はアニメを再生する準備を始める。
ただ同時に、僕の心の内には1つの懸念もあった。
──この作品、ホラー要素あるんだよな。
僕の記憶の中の安奈はホラー系そんなに得意じゃなかった気がするけど……。
まぁ本人が乗り気なのに水を差すのもどうかと思うし、ここは黙っておくことにしよう。
数話ぶりにタイトル通りオタク要素の絡む話になりました。
席替えがらみの話はもう少し短くまとめられたような気がしないでもないですが、見切り発車の行き当たりばったりで執筆してますのでご容赦を。
とはいえプロットはある程度作ってありますので、極端に話が変な方向に飛んでいくことはない……はず。
ないと信じて書いていきますので、次回もよろしくお願いします。




