一大イベント──ってほどではない
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「隠ー。どうだった、点数?」
授業が終わった直後、坂本くんがやってきた。
「70点。そっちは?」
「62。まー最低限の勉強にしてはよくやったほうじゃね?」
「最低限はやったんだ、さすがに」
中間テスト。
1学期始まって早々に訪れる憂鬱なイベントは、特にトラブルもなく終了した。
今さっきの授業で全科目のテストが返却されたこともあって、教室内の空気はここ数日で一番明るいというか、弛緩してる気がする。
僕も、全科目が返ってきてやっと落ち着けた気がする。
赤点はないだろうと思っていたけど、実際に返されるまではどこか不安なところもあったわけで。
「でもどうせすぐ期末テストなんだよなぁー……。テストの間隔短くね?」
「分かる。まぁ空いたら空いたで、テスト範囲が増えるだけだけどね」
他愛ない雑談をしたあと、掃除を終えて帰りのHRの時間になる。
特に中身のない連絡事項だけして終わり……と思いきや、担任の綾瀬先生はいきなりとんでもないことを言い出した。
「これで連絡はぜ……あ、そうだ」
教師でありながらロン毛に無精ひげで喫煙者。
そんな綾瀬先生は後ろ髪をいじりながら言葉を続けた。
「お前らテスト全部返って来たんだよな?」
「来ましたー」
一番近い子が答えると、綾瀬先生は教卓の中から小さな箱を取り出した。
「じゃあ、席替えすっからくじ引け」
「「……今!?」」
せ、席替え!?
クラス全員が揃って驚き、それを見て綾瀬先生もなぜか目を見開いた。
「なんだお前ら。好きだろ席替え」
「席替えはいいけど!」
「それ掃除前に引かせろよくじー!」
「今から机動かすの怠くね?」
「とっとと帰らせろー!」
やいのやいの、非難轟々とはこのことか。
まぁ実際、帰り支度をしたのに今からは面倒くさいと僕も思うけど。
「うるせー! じゃあ今引くだけ引いて、明日の掃除のときに移動でいいだろうが!」
「なんでくじ引いた後に1日空くんだよ!」
「くじ引いたらすぐ席移動すんのがセオリーだろ!」
やいのやいの、以下略。
「なんだお前らめんどくさいなぁ……。朝のHRじゃ1限目の先生に迷惑かかんだろうが、絶対」
「だいじょーぶだいじょーぶ、すぐ移動すっから!」
「ほんとか~?」
綾瀬先生は疑わし気に僕らを見回す。
が、諦めたのかため息をつきながらくじの箱を引っ込めた。
「絶対だかんな。迷惑かけると俺が小言言われんだから……」
迷惑云々より小言言われたくないだけなんじゃないか?
と、誰もが思ったことだろう。
「じゃー……特にもう連絡事項はないから今日はこれで終わり。委員長、挨拶」
「はい。きりーつ、礼」
結局大移動は起こることなくHRは終了した。
「……席替えかぁ」
席替えといえば学生にとっては超重要なイベント──いや、重要に超を重ねるほどじゃないかも?
けど学校生活のモチベーションにかかわるって意味じゃ、大きな意味を持つイベントだ。
教室中心や半分より前になると嫌だし、隣や前後が誰になるかも重要になってくる。
このクラスで隣や前後に来てほしいというか、来ても変に気を遣ったり緊張したりしないのは安奈と坂本くんくらいだ。
いや、でも安奈が近くに来るとボロが出そうで怖いかも。
そうなるとやっぱり坂本くんと席が近くなればいいなぁ……。
今回は安奈ちゃんも美黎ちゃんも出てこず、教師も含めて野郎しか喋っていません。
ラブコメとしてどうなのか、と思わないでもないですが、まぁ連載小説の1話あたりの文字数を考慮するとこういう回があってもいい……ですよね?




