表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

影の兵士

俺の名は必要ない。

なぜなら、ここに記すのは俺自身の物語ではないからだ。


――これは、“彼”の記録だ。


泥にまみれた兵舎。飢えと恐怖に支配された最前線。

毎朝、誰かが死体袋に押し込まれ、誰かが無名の墓穴に投げ込まれる。

俺たちは番号で呼ばれ、使い捨ての駒として消費される。


そんな地獄の只中で、ひときわ異質な輝きを放つ存在がいた。

奴は貴族の血を引き、幼い頃から戦士の栄光を与えられた――

プライド高きエリート戦士。


整った顔立ち、整然とした鎧、背筋の伸びた立ち姿。

俺たち泥に沈む兵士には到底真似できぬ威容。

だが、その瞳に宿るのは慈悲ではない。

常に冷笑し、我らを見下し、己の誇りを守ることにしか興味がない。


「無様だな。這いつくばることしかできぬ下僕どもめ」


奴の声が響くたび、心の奥に怒りと憎悪が募る。

だが同時に、誰もが逆らえない。

圧倒的な力と、血筋と、立場が――俺たちを押し潰していた。


そんな時だった。

俺たちの目の前に、もう一人の戦士が現れたのは。


泥にまみれ、笑みは狡猾で、言葉は毒に満ちている。

欺き、騙し、裏切りを平然とやってのける。

だが、なぜだろう。俺たちは、いつの間にかその背を追っていた。


奴の名を俺たちは知らない。

だが、後に皆こう呼ぶようになる――


英雄 と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ