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サツキとナギ
「ありがとう、スザク。後は皆の所へ」
スザクが掴んでいたサツキの騎士服を放し、飛び立っていく。
大聖堂の近くの小さな教会のかろうじて残っていたバルコニーで私はサツキと向かい合っている。
もう教会の鐘はない。
これがこの世で見る最後の光景。
父がすぐそこまで来ている。
不思議。
話したこともないのに、お父さんと呼んだことすらないのに、あの赤い目をした黒い龍が父親なんだとすぐにわかった。
「ナギ」
「サツキ、私もう行かなくちゃ」
「俺も一緒に行く」
「一人で行くから、サツキは来ちゃだめ」
「行く」
「だめだよ」
「俺はナギのいるところにいたいだけだ。昔からずっと」
嫌だな。
何で最後にこうなの。
目を開けていることができない。
どうして今なの。
見ていたいのに、最後だからサツキのことずっと見ていたいのに。
「ナギが地獄へ行くって言うんなら俺も一緒に行く」
サツキを見ていたい。
この人だけをずっと見ていたい。
他には何もいらない。
何もしたくない、できなくていい。
この人だけをまっすぐに見ていたい。
「一緒に地獄へ落ちよう、ナギ」
お父さん。
まだ来ないで。
もう少しだけこのままでいさせて。
私この人を、この人だけは、地獄まで持っていきたいです。




