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魔法騎士の花嫁  作者: 青木りよこ
2/22

花嫁のドレス

今日はナギの結婚式のドレスの試着をサツキと二人で見に行った。

私とサツキとナギとあともう一人テトラの四人は幼馴染で同い年で魔法学校でもずっと一緒だった。

男子二人、女子二人でバランスが取れていたのが良かったんだろう、それももう終わる。


魔法学校はもう卒業だし、卒業式が終わり、ナギが結婚すれば、私達四人の楽しかった子供時代の全てが終わる。


白いウェディングドレスに身を包んだナギはとても美しかった。

彼女自身がまるでこの世にたった一輪しか咲くことを許されない花のようだった。

繊細で足音ですら近づくのを躊躇わせるほどの儚さに、私は綺麗だなんて月並みな言葉を口に出すのが軽薄に思われて何を言うのが正解なのかわからず口元をしっかりと引き結ぶことしかできなかった。


「ミヤコちゃん、サツキ、私似合ってる?おかしくないかな?」


「おかしくない。綺麗だよ、ナギ」


あんたってナギにはそういうこと平気で言うのよね。

無表情で、でも本当に心からそう思ってるんだろうな、サツキは。

この男がナギに嘘をつくことなど一度もなかったに違いない、そして今後も、もう絶対にない。


「良かったぁ。シオン様もそう思ってくれるかなぁ。あ、そんなこと思うの烏滸がましいか。私みたいなのと結婚して下さるだけでも有り難いと思わなくちゃ。あんなにかっこいい人なんだから」


「誰だって、ナギと結婚したいよ。可愛いし、優しいし、いい子だし、シオン様だって内心浮かれてるって、ね、サツキ」


「ああ。あの人はわかりにくいから」


あんたが言うなっての、兄弟そろって、デカいばっかりで、ああ、そうか、兄弟そろって顔良し家柄良しで、ずっとちやほやされてきたから、表情筋死んでても問題なかったんだよなぁ。

悔い改めなさいよ、一回わからせなきゃなんないんじゃないの、こういう兄弟には。


「そうかなぁ。私小っちゃいから結婚式でシオン様に屈ませるの申し訳ないよ」


「十六の女嫁に貰うんだから屈むくらいしていいと思うわよ。寧ろ地べた這いずりまわりなさいよ。身長なんて気にしないの、あっちはいくら顔が良くて背が高くて足が長くて高収入だからって二十六でバツイチなんだし」


「だって、ホントに申し訳なくて。だってシオン様の別れた奥様、背が高くて美人で如何にも大人って感じでシオン様とお似合いだったから。私はお母さんも小柄だし、もう背伸びないよ、きっと」


「そんなの気にしなくていいわよ。あんなにあっさり離婚したんだから。それにシオン様離婚した時もちっとも悲しそうじゃなかったじゃないの、ね、サツキ?」


「ああ」


「ミヤコちゃん背が高いから羨ましいよ」


「まあ確かに高い所脚立に乗らないで取れるしね」


「そうじゃなくて、私はミヤコちゃんがいつだって羨ましいよ」


「そうなの?」


「うん。美人で大人っぽくて」


「老けてるからね」


「そんなことないよ。かっこいいもん。強いし」


「別に強くなくたっていいじゃないの。これから国一番の魔法騎士夫人になるんだから。うちの国一番ってことは世界一強いってことでしょ。悪魔討伐数現役最多世界最強の男と結婚するんだから、あんまり強いとバランス取れないでしょ。強くなくていいわよ、ね、サツキ?」


「ああ、ナギはいてくれるだけでいい」


それを言うか、ここで。

ホント、ナギには素直なんだから、わかりやすくていっそ悲しいわ。

そんなに好きなのに、自分のお兄さんと結婚していいわけ。


「考えてもしょうがないよね。兎に角当日まで元気でいなくちゃね。健康を維持しないと」


「ああ。健康でいつまでも生きていてくれ」


「うん。私頑張るね」


何そのやり取り。

あんたたちって、どうしてこうなの。

サツキ、あんたってナギには素直なのに、肝心なことは何にも言わないんだから。

私もそうか。

私も言えない、サツキに何も言えない。

だって知ってるから。

サツキの中にはナギしかいないって、子供の時から痛いくらい知ってるから。

でももう、その日は来る。

ナギはシオン様と結婚する。

結婚して史上最高の魔法騎士を産むだろう。

それをナギは期待されているし、そのためにシオン様はナギと結婚するのだから。

あの人はナギの才能を欲している、サツキと違って。

サツキはきっとナギが何もできなくたって好きなんだろうな。

ナギってだけでサツキに愛してもらえるんだろうな。

私はそれが世界で一番羨ましい。











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