ナギ
ルシファー率いる悪魔軍と黒い龍の姿をした悪魔バハムートが率いるドラゴンの群れの二つの勢力が同時に姿を現したことで王国史上最大規模の悪魔の襲来となった。
私は生まれて初めて世界が終わってしまうと思った。
ドラゴンの群れが大聖堂を取り囲んでいた。
もう既に大聖堂の屋根は見るも無残な姿となり、最早天から降る雨からすら身を守れない状態となっていた。
ナギ、何処にいるの?
無事だよね?
シオン様一緒だよね。
ナギ。
ナギ。
ナギ。
白いドレスを着た少女が大聖堂の中に一人でいた。
何かを誰かを待つように、静かに微動だにせず立っていた。
少女に黒い龍が迫っていく。
私は叫ぶ、ナギと少女の名前を叫ぶ。
黒い龍が彼女を飲み込もうとしたところへ、私は割り込み、左腕でナギをかっさらい、自分の前に乗せる。
何度も二人乗りしたから大丈夫、私はナギ一人くらいならどこまでだって乗せていける。
「ミヤコちゃん」
私は黒い龍から逃げるため、高く高く飛ぶ、空の一番高い所まで行くために。
「もう男どもは当てになんないから、私がナギを助けるよ。本当に肝心な時にサツキもシオン様もいないんだから、何で一人でいんのよ。花嫁を一人にする男なんかにナギはやれないよ。もう私が貰う」
「ミヤコちゃん」
「もうこのまま二人で逃げよ」
「ミヤコちゃん」
「私はね、ナギ。サツキのことも大好きだけど、あんたのことだって大好きなんだよ。だから、あんたが不幸になるとこなんて絶対見たくないんだから」
ナギは私の胸に小さな顔を預けた。
「ミヤコちゃん。ありがとう」
ナギが花嫁のベールを落とす。
纏まっていた綺麗な金髪が緩やかに風に流れる。
この美しい少女がサツキの傍にいないのは私が耐えられないと思った。
黒髪の笑わない少年を思い出す。
黒い瞳がいつも一人の少女を見ていた。
彼女だけを見ていた。
その子の隣にはいつだって少年と対極の色を持つ少女にいて欲しかった。
あんた達はやっぱり二人で一人なんだ。
だから離れたりしちゃいけないんだよ。
離れたりなんかできないんだよ。
諦めな、二人とも。
「私もミヤコちゃんが大好き」
ナギと叫ぶ声がした。
サツキに似た声が聞こえた。
「私とずっと友達でいてくれてありがとう」
ナギ。
私は叫ぶ。
もっと早く早くして。
ナギが落下していく。
私は箒を握りしめ、必死にナギを追いかける。
ナギの両手は誰にも伸ばされていない。
黒い龍が、大きな口を開けている。
ナギ、何であんたこんな時まで笑ってるのよ。
私が泣いてるのに、何であんたはいつも笑ってるのよ。
ナギ。
ナギ。
赤い燃えるような光が視界を掠め、星が流れる様に消えていった。




