ミヤコとナギ
「もうあと一回しか学校来ないんだねー」
「私は卒業式出ないから今日が最後だよ」
サツキは卒業式の主席の挨拶の打ち合わせ、テトラは先生からの呼び出しで、放課後ナギと二人きりだった。
「私は後輩指導で来るかもしれないけど、ナギは来ないから最後に校内廻って帰ろうか?」
「うん、そうだね。もう来ることないもんね」
私達は並んで庭に出た。
卒業式はもう魔法庁の騎士服を着るから制服は今日が最後だ。
「シオンさんお家にほとんどいないから毎日寂しくない?ナギ大丈夫そう?」
「大丈夫だよ」
私達は演習場の森へ向かう。
「誰もいないと静かだね」
「ねえ、ナギ。本当にいいの?」
「何が?」
ナギはどんどん綺麗になる。
昨日より今日、今日よりも明日、毎日毎秒綺麗になっていく。
それはもう恐ろしい速さだった。
まるで鱗を一枚一枚落としていくかのように、無駄なものを全て捨てていくように、美しくなる。
もうここからは何も持って行かないかのように、まるで全てが終わりに向かっているようで私は怖くなる。
ナギが知らない何かになっていくようで、もうずっと遠くへ行ってしまうようで怖くてたまらない。
「本当にシオン様と結婚していいの?」
「いいに決まってるでしょ。ミヤコちゃん、どうしちゃったの?」
「私不安だよ。怖いの。ナギ本当にこれでいいの?後悔しない?」
「しないよ」
「ねえ、ホントのこと言って。シオン様のこと本当に好き?」
「好きだよ」
「サツキよりも好き?」
「うん。サツキよりも」
「嘘」
「嘘じゃないよ。本当に好き。私シオン様のお役に立ちたいの」
「何それ。役に立ちたいって、ナギは道具じゃないでしょう?」
「ないよ」
「そんなの好きじゃないよ。本当に好きなら相手が役に立たなくたって好きでいられるはずだもん」
「シオン様はね、私を助けてくれたから」
「え?」
「シオン様私を助けてくれたの。だから私、シオン様に恩があるの。だから私、シオン様のお役に立って、シオン様の望みをかなえて差し上げたいの」
「それ違うよ、違うよナギ」
「ミヤコちゃん」
「助けてくれたからって結婚してたら、あんたこの先百回くらい結婚しなくちゃならないじゃない」
「そんなに助けてもらえないよ」
私は今酷くみっともない顔をしているんだろう。
涙が止まらなかった。
ナギは泣いていない。
ナギは小さい頃から泣かない子供だった。
考えてみたら私はナギが泣くところを見たことがなかった。
あんなにずっと一緒にいたのに。
サツキの次には一緒にいたのに。
一度もナギは泣いたりしなかった。
ナギは泣かなかったんじゃなく、泣けなかったのだと気づく。
サツキの前でもきっとナギは泣けなかったんだ。
でも、それでも、私は。




