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魔法騎士の花嫁  作者: 青木りよこ
11/22

シオンとナギ 5

女はケーキを平らげるとコーヒーをもう一杯頼んだので、俺も冷めたコーヒーを飲み干した。


「どこまで話したっけ?」


「バハムートの娘だってとこまでだ」


「そういえばナギは元気なの?」


「ああ」


「随分可愛くなったでしょう?私の娘だもの」


「そうだな」


「本当に面白くない男ね。ナギも可哀想に」


「ホントにな」


「あら、自覚あるのね。まあいいわ。バハムートのとっておきの秘密、教えてあげるわね」


「誰に聞いた?」


「バハムート本人に決まってるでしょ。私達凄く愛し合っていたんだから。私最上級悪魔の子供生んでるのよ。考えてみたら凄くない?」


「凄いな」


「並の女ならあの魔力に耐えられないんですって。だから無事に生まれることほとんどないの。皆死んじゃったって。ナギは奇跡なのよ。知ってた?」


「それも本人から聞いたのか?」


「そうよ。あの胎動に耐えられたんだから私って本当に凄いわ。五十億じゃ安すぎるくらいよ。国に表彰してもらってもお釣りがくるはずよ」


「そうかもな」


「バハムートは子供を欲しがっていたの。何故だかわかる?」


「味方を増やすためか?」


「違うわ。食べるためよ」


「食べる?自分の子をか?」


「そう」


「何のために?」


「強くなるために」


「強くなるため?」


「そう。バハムートはね自分の子を食べると強くなるの」


「ナギを食べに来るということか?」


「そうよ。そのために私にナギを産ませたんだもの。奴は必ずナギの前に姿を現すわ。強くなるために」


「じゃあそこを叩けばいいんだな」


「あら、あんた察しが悪いのね」


「何がだ?」


「ナギを食べたら強くなるって言ってんのよ、私は」


「強くなられたら困るだけだろ」


「何言ってんのよ。強くなるだけ強くならせて倒した方があんたにとってはいいんじゃないの?史上最高になりたいんでしょう?」


「何が言いたい?」


「バハムートを最大に強くして僕にしたらいいんじゃないのって言ってるのよ。わかる?」


「ナギを食わせろってことか?」


「そう」


「母親の言うことか」


女は笑った。

その笑みは冷笑とも取れたし、自虐とも取れた。


「あとこれが重要なんだけど親になった子供は食べても意味はないの。だから奴はナギが未婚の間に来るって言ってたわ」


「それなら何故あのジジイにナギを売り飛ばしたりした?」


「お金、なかったから。だってしょうがないでしょう。子供抱えて女が一人で生きていくのってどれだけ大変か。男にはわからないでしょうね」


「子供を売っていい理由にはならない」


「そうかしら、私はナギのためにあらゆる選択肢から選んでやったのよ。一番金持ちのジジイを。大きなお城みたいな家に住んで、綺麗な服を着せてもらって、メイドに傅かれて、美味しいもの沢山食べて、そういう生活をさせてやろうと思ったのよ。優しい母親でしょう?」


「もういい」


「結果的にあんたはナギを囲い込めたんだからいいじゃないの」


「お前は何がしたいんだ?」


「別に何も」


「他に何か言っていたか?」


「美しく成長したら食べに来るって。丁度貴方と結婚するタイミングでやって来るんじゃないの。貴方も忙しいわね、あれも目覚めるんじゃないの。ほら氷漬けにされてるとかいうあれ」


「あちらから来てくれるなら丁度いい」


「大した自信ね。倒せると思ってるの?」


「俺なら倒せる」


「そう。そうね。あんたはきっとナギを食べさせたりしないわね。残念」


「残念?」


「欲を出して、ナギを食べさせて最大限に強くして貴方が負けちゃったんじゃ、国ごと滅んじゃうものね。私は別にそれでいいんだけど」


「国が亡んだらお前だって死ぬんだぞ」


「いいわよ。全然それで。生きてたって何にもいいことなんかないもの。寧ろ滅んで欲しいわよ、こんな世界」


「そうか」


「そうね、賭けておいてあげる。貴方はきっとナギを食べさせたりできない」


「何故そう思う?」


「あんな可愛い子食べさせたりできるもんですか。貴方はきっと何も掴めないわよ。有り金全部賭けてもいいわ。貴方はきっとナギを選ぶ」












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