幼馴染が結婚する
幼馴染が結婚する。
その結婚はずっと前から決まっていたことだけど、私はそんな日は永遠に来ないのじゃないかと思っていた。
漠然と、当然のようにそう感じていた。
自分のことじゃないのに不思議な自信があった。
そう、全部この男のせいだ。
「サツキ、本当にいいの?」
「何が?」
「ナギもう結婚しちゃうよ、あんたのお兄さんと」
サツキは本当にわからないというように首を傾げた。
百九十近く身長がある男のやる仕草ではないが、顔は年相応なので、まあ許容範囲で可愛いと言えなくもないので、私基準では合格だった。
これがこの男、私の幼馴染の最も悪い所だ、顔の良さで何もかも有耶無耶にして貰える、立派な短所だ。
「ねぇ、本当にいいの?」
「いいに決まってる」
「本当に?後悔しない?」
「後悔?」
「そうだよ、意味わかってる?ナギはあんたのお兄さんと結婚するんだよ」
「わかってる。もう八年も前から決まっていたことだろ。今更何言ってるんだ」
ナギのこと好きなんでしょう?
私はその言葉を飲み込んだ。
どうしても言いたくなかった。
ここまで言ってても認めたくなかった。
だって私もずっとサツキのことが好きだったから。
「うん、そうだね」
サツキ、あんたはホントは何を考えてるの?
私怖いよ。
あんたはナギが結婚しても変わらないでいられるの?
もう、その日はそこまで来てるんだよ。