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Memory of the Sky  作者: 漆聖
4/4

Memory3 A.F.S.F.

 

《CリーダーよりC2へ。》


「Cリーダー、どうぞ。」


ヘルメットごしから聞こえる通信。


《すぐにポイントDへ向かえ。》


「C2、了解。」


《それと、ツバサ。

あまり感情的になるんじゃないぞ。》


「言われなくても。」


めんどくさそうに返事を返す。

それに対し軽く笑いをこぼす通信者。


《貴様の言葉遣いはいったいいつになれば良くなるのやら。》


「ふんっ。

いつでしょうね。」


そう言って通信を切った。

ツバサの目に映り始めた赤い光。

光のある場所まではまだかなりの距離がある。

今よりさかのぼること数分前。

突如韓国辺りから発射された無数のミサイルが、夜宵学院を襲撃した。

そのせいで、夜宵学院は壊滅的な被害を受けた。


「C2、ポイントD確認。

着陸体制に入る。」


なんとか着陸場所を見つけたツバサはすぐさま着陸体制にはいった。

機首をまずあげ後輪から着陸し、そのまま前輪を地につける。

何メートルか進んでから静かに止まった。


「ちっ‥‥‥。」


コクピットの中から見えるのは燃え盛る火のみ。

容赦なく燃え続ける。

校舎は崩壊。

今にも崩れ落ちそうに建っている。


「C2よりCリーダーへ。

引き続き生存者捜索を行う。

以上。」


通信を切るためヘルメット横のスイッチに手をやる。


《待てっ、ツバサ!!》


「っ!!」


ツバサの鼓膜が破れるくらいの大声。

数秒間ツバサの無表情だった顔が少し変わった。


「そんなに大声出さなくても聞こ‥‥‥」


《すぐに引き返せっ!!》


言葉を遮りノイズ音と共に通信が鳴る。


「なっ、何?!」


《また韓国側からミサイルが発射された!!

さっきよりも数が多い!!

迎撃を行う準備は出来ているが念のためだ!!

引き返せっ!!》


あまりにも唐突な出来事に戸惑うツバサ。

コクピットを開くスイッチに手をやったままでいる。

「どうする?」などと考えるひまさえない。

と、そのとき、


ピピ、ピピ!!


「これは?」


突然鳴り響く通信回線。

しかし今回は状況が違う。

今ツバサの乗っている戦闘機は特定の機体、戦艦、回線にしか通信は出来ない。

ましてや、戦闘機でもなく戦艦でもないところからの通信なんてありえる訳がない。


「なぜ‥‥‥?」


恐る恐る回線を開いた。

と同時に、


《た‥‥ザザ‥‥‥す‥‥‥ザザ‥ザ‥‥‥けて‥‥‥》


聞こえて来たのは救援を求める声。


今にも途切れそうに、ノイズ音が混じる。


「おいっ、大丈夫か?おいっ!!」


《ザザ―――――――》


返事をするが返ってこない。

聞こえるのはノイズ音のみ。


「ちっ!」


ツバサはすぐに逆探知を始めた。

通信から聞こえる人を助けるために。


《ツバサ何している!!

早くその場から引き上げろ!!》


「待て!まだ引き上げる訳にはいかない!」


《なんだと?!》


「あんたならミサイルくらい撃ち落とせるだろ!

頼みますよ、Cリーダー!」


《おいっ、待て!ツバサ!!》


ピッ。


Cリーダーとの通信回線を切った。

こちらから通信しない限り向こうから通信が来ることはない。

そのまま逆探知を続ける。

その間にもミサイルが接近しているかもしれないというのに。


「あった!でもここは‥‥‥。」


示された場所は対空戦闘特殊訓練装置のある弥生学院の別館だ。

コクピットを開き外に出る。

弥生学院別館に向け走り出した。

すぐに別館にたどり着いたが、別館だからと言って被害が少ない訳ではない。

表面の壁は大きな岩がぶつかったかの如くへこんでいたり、あるところではまだ燃え続けているところもある。

このまま中に入るのはあまりにも危険すぎるが、それでもツバサは中に入って行った。


「誰かいるか!!」


辺りに散らばる瓦礫を避けながら大声で言った。

火花が噴くこともあった。


「どこだっ!!どこにいる!!」


必死に辺りを見渡すが、人がいる気配はまるでない。

諦めかけたツバサの目に模擬戦闘システムが写る。

「あの中か!!」と口ずさみながらそれに近づいていく。


「おいっ!!」


誰もいない。


「はずれか‥‥。」


今度はその隣の装置を、


「誰かい、っう!!」


酷すぎる。

中の装置が押し潰され中にいる人はぐちゃぐちゃに。

そして、最後の一個に目をやり、


「頼む!」


そう言って緊急開閉レバーを回し扉を開いた。


「おいっ!!」


中を見る。


「お、お前は‥‥!?」


中で倒れているのは一人の少女。

中の装置がもう少しで少女を押し潰してしまうところだった。

「起きろ!!おいっ!!」


その少女とは、


「おい、アマギ!!」


中にいたのはアマギソラ。

爆撃を受けた時、ちょうどこの対空戦闘特殊訓練装置の中にいたのだ。


しかし、いくら揺すっても起きない。

中から引っ張り出しその場に寝かせ、息の確認をする。


「よし、生きてる。」


ソラを抱え外に走って行く。

なんとか別館から出れたものの、ツバサはあることに気付く。


「おいおい、うそだろ?」


海の方向を見ると無数の戦闘機が。

そしてさらにその奥にも無数の戦闘機が。

そして、戦闘機と戦闘機の距離がどんどん縮まっていく。

ツバサはそれには全く気にせず、とにかく止めてある機体の方に走っていく。


ドンッ!!


爆発音がした。

すぐに爆発音のした海の方を振り向く。

戦闘機が一機撃墜された。

続いて一機。


「何やってるんだ日本空軍は!!」


機体に乗りソラを自分の前に。


「C2よりCリーダーへ。応答を願う。」


《ツバサ!!大丈夫か!?》


「はい。それと怪我人を一人保護しました。

このまま帰投します。許可を。」


《怪我人だと?!》


「頭を打っていて出血も確認しています。

幸い命に別状はありませんが、なるべく早く手当てを行うべきです。」


《しかしだな、お前もよく分かっていると思うが‥‥‥》


「分かってます。

俺に考えがあります。」


《考えだと?》


離陸体制に入り、エンジンをかけた。

機体は加速をつけ空へと上がった。


「話は後程します。それより許可を。」


《あ、あぁ。

CリーダーよりC2へ。

怪我人の着艦を許可する。》


「C2了解。」


そう言って海の方にある一隻の軍艦に着艦した。


「救護班!!急いでこいつの手当てをしろ!!」


すぐに救護班を呼びソラを預ける。

と、彼はまた空へと飛び立った。







数時間後、戦闘は一時収まった。

日本空軍の『SDF‐002 ムラサメ』の実力を十分証明することも出来た。

そんな中、ツバサの着艦した軍艦のブリッジでは話し合いが開かれようとしていた。


「まだなのか?」


「焦らないで下さいよ。」


壁にもたれているツバサ。

その前には先程、ツバサと通信していたらしい男の人が。


「で、お前の連れとやらは大丈夫なのか?」


「まだ意識は醒めてないけど、大丈夫みたいです。」


「そうか。しかしだな、ツバサ。

お前からその子の力について聞いたが、納得出来ないことが一つある。」


「ただの友達です。」


ツバサの言葉に驚く男。

まだ聞いてもいないのになぜわかる?!

男が聞く前に返事を返した。


「おいおい、まだ誰もそんなことは言ってないぞ。

俺が聞きたいのは‥‥‥」


「失礼する。」

「失礼する。」


二人の声がブリッジに響く。


「やっとお出ましか。」


ツバサの前にいた男が二人に近づく


「すまない。少々遅れてしまった。」


小柄の少女と身長の高いアメリカ軍人の二人が入ってくる。

その襟元の階級を示すマークに目をやる。


「ほう。大佐か。

一緒ではじゃないか。」


笑いをこぼしアメリカ軍人の肩を叩いた。

一瞬戸惑ったアメリカ軍人ではあったが、笑いにつられ自らも笑った。


「おっと失礼。」


距離を置き、気をつけをして敬礼。


「日本空軍極秘軍事組織所属の、レンベルト・レン・レベス大佐だ。

よろしく頼む。」


壁にもたれていたツバサもだらしなかった襟元を閉め、敬礼。


「同じく、ハヤミ ツバサです。

よろしくお願いします。」


続いて小柄な少女が口を開く。


「こちらはアメリカ軍特殊強襲空軍部隊のラスティ・アーシュネビル大佐。

例の同盟の件で日本に来られた。」


ラスティは敬礼し、よろしく、とだけ言った。

本人はなにかにとまどっている様子。


「それと、レンベルト。

大佐を一時的にC小隊の一員にしといた。

アラスカに着くまでの間、大佐をよろしく頼むぞ。」


「りょうかいっ、艦長。」


か、艦長?

と言葉をもらすラスティ。


「ツバサ。大佐を部屋に案内してやれ。」


「はい。」


そのままツバサとラスティの二人はブリッジを出て行った。


「どんな風に大佐と接したんだ?

素の自分か?

それとも、小学生としての自分か?」


バカにでもするようにアゲハの方を向いて話した。


「な~に。いつもの私に決まっている。

第一、小学生の自分とは何だ。小学生とは。」


外見年齢12歳、実年齢12歳、身長約145センチ、スリーサイズは上から50・45・52、体重39キロ、好きな食べ物イチゴ、嫌いな食べ物辛い物全般、好きなタイブ―――――――。


「ちょっとレン。

あんた今何考えてた訳?」


幼い声を大人っぽくしようと、無理しているのがあからさまに分かる。

部下になめられないように腕を組み偉そうにするが、可愛いげが増し逆効果。

相変わらずアゲハ本人は無自覚だが。


「いいえ、何も。」


そんなアゲハをレンはからかうのが好きなのだ。


「それよりアゲハ艦長。

いったいいつになったらその長い髪を切るんだ?」


「答える必要はない。」


艦長席に座ろうとするアゲハだが、席が高いためなかなか座れない。

ギロッ。

レンを睨む。

呼び寄せるように右手をクイクイ、と動かす。


「アゲハ艦長、おねだりわ?」


拳が飛んで来た。









「大佐、我々のことについて少し話をします。

アゲハ艦長に言われたことなので。」


「そ、そうか。

では、聞くとするか。」


初めて会話を交わす二人。

ブリッジエレベーターに乗ったときから二人の沈黙は始まった。

ただでさえ目つきの悪いツバサ。

初めて会った人にとってこれほど関わりにくい人はいない。

目を合わせただけでも恐ろしいというのに。


「ありがとうございます。」


敬礼。


「今から言うことは極秘レベル9の軍事事項です。

そのつもりで聞いて下さい。」


極秘レベル9。

最高レベルは10まで。

今までの過去最大レベルは5までしか実在しない。

それを遥かに上回るレベル9。

覚悟を決め頷くラスティ。


「日本空軍極秘軍事組織、通称『A.F.S.F.』。

内閣総理大臣ハナイ リョウと、2078年にイギリス脱走兵として日本に亡命したレンベルト レン レベス大佐の二人によって設立した軍事組織です。

存在を知っているのは空軍の中でも数人しかいません。

そして、今我々のいるこの軍艦も見た目は他の軍艦と変わらないものの『A.F.S.F.専属艦』です。

運航性能、迎撃性能等が他の軍艦をはるかに凌いでます。

他にも数多くの極秘事項がありますが、今日はここまでで終わります。

また話す必要がある事はこちらから連絡します。

少々早口になりましたが、大丈夫でしょうか?」


ツバサの話を聞いている内にラスティ大佐の部屋に着いてしまった。

本人はまだあまり分かっていないような様子。


「何か質問はありませんか?

なければ私はこれ‥‥‥」


「ちょっと待て!」


「なんでしょう?

お答え出来ることであればお答えします。」


そう言ってまた先程の目つきでラスティ大佐を見る。

もう慣れたのか、それについてはあまり気にしなくなった。



「その~、なんていうか。

アゲハについてなんだが‥‥‥。」


「ハナイアゲハ12歳。

2012年5月16日、夜宵学院を壊滅させた忌まわしき事件、以降『紅の刃』と略します。『紅の刃』により大きな損害を受けた日本は内閣総理大臣の権限に基づき、アメリカとの軍事同盟締結が許可されました。

その際、日本に残って指揮をとらなければならない総理の代わりに自らの娘を代理に、A.F.S.F.の一員に任命しました。

子供の頃から専門的に訓練をうけさせていたらしく艦長の資格は十分にあると思われます。」


「12歳で艦長‥‥‥。

これはまたすごいなぁ」


あまり話を信じてなさそうなラスティ。

12歳で艦長、そんな事例は一度も聞いたことがない。

外見上としとの艦長ならまだ分かるが、正式な艦長はさすがに信じられない。


「信じる信じないかは大佐の自由です。

では失礼します。」


ラスティに対し敬礼をしてその場を去ろうとする。


「待て待て!」


またツバサを呼び止める。


「最後にあと一つ聞かしてくれ。

君たちのことだ。」


「どうぞ。」


「一時的にC小隊に入れと言われたが、C小隊とは何のことだ?」


「コンバット小隊。

レン隊長と俺が組んでいる一個小隊です。

以上です。他には?」


さっきまでは詳しく説明していたツバサ。

今回はなぜか少し適当。


「乗っている戦闘機は?」


「極秘事項です。」


「えっ?」


「いずれ説明せねばならない時が来るはずです。

その時まではお話することはできません。

一つ言えることはガイノスに十分対抗できる兵器です。

では、用があるのでこれで失礼します。」


敬礼をしてその場を去る。

ラスティは部屋の扉の前で立ったまま、


「ガイノスに対抗できる兵器だと‥‥‥‥。」


ガイノスと言えば、イギリスが作り出した歩行型奇襲戦闘兵器。

俗に言うロボットと言われるもの。

分厚い装甲に破壊力の高い武装。

十分といっていい程対抗できる兵器は今までにない。

それがこの日本にあるのだと言う。

それも自信たっぷりに言っていた。

ガイノスに対抗できる兵器‥‥‥‥。

いったい何なのだろう。

そう思いながら重い扉を開けてラスティは部屋に入って行った。



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