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Memory of the Sky  作者: 漆聖
3/4

Memory2 条約撤廃

 

「断るのだな‥‥‥。」


よどんでいる会議室。

その中で響く一人の声。


「もう一度聞くぞ。

本当にいいんだな?」


円形状に配置された机。

出席者は10人程度。

その10人程度の人の目を見て、


「考え直すことだって出来るんだぞ?

俺は急かしているつもりはない。

ただ、本当にその決断が、あなたたち‥‥‥、いや、日本人にとって正しい決断になるなのか?

一歩間違えれば日本は‥‥‥。」


口を止め、机の上に置いていた震える手をさらに強くにぎりしめる。


「滅ぶぞ。」


沈黙が続く。


「くっ!

そうなってもいいと言うのか!!」


にぎりしめていた手を開き、机をおもいっきり叩き立ち上がった。

彼の目はやけに真剣で、何の迷いもない。

むしろ言っていることに、とてつもない自信を持っているように。


「それでもあんたたちはっ‥‥‥。」


「大佐!」


「っ!」


「落ち着いて。」


「‥‥‥‥すまない。」


鼻から息を出し、一口ずさむ。


「たしかに大佐の言うとおりなのかもしれん。

だがそれは『かも』の話だ!!

確率の少ないものに国を動かす訳にはいかないのだよ!!」


その横の席から、


「我々日本をあなた方の争いに巻き込まないで頂きたいねぇ。」


さらに、


「それに日本は平和だ。

今ここでアメリカと同盟を結べば、必ずや日本人の血を流すことになる。

それはなんとしても避けたいことなのでな。」


黙り込むアメリカ人大佐。


「残念だな、大佐。」


立ったまま何も言わない。


「どうかしたかね?」


「――――――――ていない。」


ようやく口を開いたかと思えば、声が小さく日本将軍たちには聞こえていない。


「何か言ったかね?」


「あなた方は分かっていない、と言ったんだ‥‥‥。」


「何を?」


「もはやこれは我々とイギリスだけの問題ではないということだ!

イギリスは今やユーラシア地方すべてを支配してしまった!

なんとかアフリカは抵抗を続けているがいずれやられる!!

なのにきさまらはっ‥‥‥!!」


声を張り先程よりも真剣な眼差しで話す。

言葉使いも荒くなってきている。


「ククク‥‥、フハハハハハッ!!」


会議室一面に響き渡る日本将軍たちの笑い声。

それは何か不気味で、気持ちの悪い笑いだ。

  

「何がおかしい‥‥。」


「それがどうした!

我々には関係のないことだ!」


「なにっ?!」


今にもぶちギレ寸前の大佐だが、


「では一つ聞かしてもらおう。」


一人の将軍が大佐に質問をした。

もはや聞く耳すらない大佐であるが、ここは会議室だ。

礼儀はわきまえなければいけない。


「そうなった原因を作ったのは誰なのかね?」


今までずっと将軍たちの目を見ていた大佐だが、初めて自ら目を反らした。

続けて将軍は話す。


「君たちがイギリスに宣戦布告をしなければ、今はこんなことにはなっていない!

例えイギリスが世界征服を企んでいるとしても、戦争さえしなければ、世界は今のように多くの血を流さなくて済んだはずだ!

こうなった全ての原因は君たちにあるのだよっ!!」


静まりかえる会議室。

チッ。チッ。チッ。

聞こえるのは時計の針の音。

何回か鳴った後、大佐は腰を下ろし口を開いた。


「イギリスは‥‥‥甘くないぞ。」


先程までの威勢はどうしたのか。

独り言を呟くように一言。

だがたしかに今、戦争が起こっている原因は、アメリカのイギリスに対する宣戦布告があったからだ。


「日本もいずれやられる。」


「ハハハハ!」


高々と笑いをもらす日本将軍。


「その心配はない、大佐。

例えイギリスが攻めて来たとしても、陸に『ガイノス』が上陸しない限り何も恐れることはない。」


※『ガイノス』

イギリスが陸海空軍の全ての軍事費を使って作り出した、歩行型奇襲戦闘兵器。

俗に言うロボットと言われるものだ。

ガイノスが開発されたせいでイギリスは一気に領土を広げた。


「それに、ポツダム条約をそう簡単に破るとも思えない。」


ポツダム条約。

第二次世界大戦後、日本の受けた対日共同宣言。

内容は、日本の領土の限定の他、日本の民主化、連合国による占領、等々。


「何の根気もなしにそんなことが分かるものかっ!

そんなのたやすく破られるに決まっているっ!」


再び立ち上がって、先程と同じ声で話す。


「お前たちは『ガイノス』と戦ったことがあるのか?!

戦ったこともないのにそんな簡単にものを言うな!」


威勢が強いものの、大佐の目は何かおびえているようにも見える。


「あれは‥‥‥。

あれは悪魔だ‥‥‥‥。

悪魔のような、破壊兵器だ!」

  

こんな大佐でさえもおびえてしまう。

そんな破壊兵器なのだ。


「つい最近、サウジアラビアで起こった戦争を知っているな?イギリス軍がサウジアラビアに進攻したあの争いを!

たった一日で‥‥‥‥、たった一日で全土を占領したのだぞっ!!」


「それが何か?」


「なっ!?」


人の話を全く聞いていないかのように返事をする将軍。

その態度にそろそろ耐え切れなくなった大佐は、震える左手のこぶしをぎゅっと握る。


そしたら、その震える左手を止めるように、隣の席の少女‥‥‥いや、将軍が大佐の左手をにぎった。


「落ち着きましょう、大佐。」


その声はまるで大人のようだが、可愛いげがある。

お尻の辺りまで伸びている長い髪が、少女自身の顔を包み込む。

パーマによってくるくるになっている髪で少しはまぎらわすことが出来ているが、少女の顔はごまかしようのないほど‥‥‥‥‥ロリ顔だ。


「彼女の言うとおり、少しは落ち着きたまえ。

日本はあなたが心配する程、弱い国ではない。

それに、ガイノスが陸に上陸したとしても、我々には『あれ』がある。」


「『あれ』?」


大佐と隣の少女以外の将軍たちが笑い始めた。

「あれとは何だ?!」と聞きたい大佐であるが、大佐の目的はあくまで同盟締結。


「とにかく、同盟締結はしない。

すまないな、大佐。」


黙って座る大佐。


「会議は以上!解散!」










「――――――――いさ。」


後ろから呼ばれているのにも気付かないまま歩き続ける。


「大佐!」


驚いて振り返る。

人が見当たらない。

そのまま辺りを見渡すが、やはり誰もいない。


「大佐‥‥‥‥下です。」


下を見ると一人の少女。

身長145センチの小柄な子。

彼女のサイズの日本空軍制服がまぁよく似合う。

体格の割には巻いた長い髪がよく目立つ。


「す、すまない。えっと‥‥‥」


「内閣総理大臣ハナイ・リョウの娘、ハナイ・アゲハです。


背筋を伸ばし右手で敬礼。

その際、長い髪がふわっと揺れた。


「今回は父の代理として会議に参加しました。」


満面の笑み。

なぜか大佐の顔が少し赤くなった。


「今回の件については本当に申し訳ないと思っています。

アメリカから遥々日本へお越しくださったに、あんな結果になってしまって。」


「何を謝ってるんだ?

俺は気にしてない。

それに、今回の決定が日本にとって最善だというのなら、それで良いと思っている。」


急に下を向いたアゲハ。

顔を上げたと思ったらまた下を向く。

いったい何がしたいのか。


「どうかしたか?」


下を向いていた顔を覗き込む大佐。

179センチという長身がアゲハをさらに目立たせる。


「あの‥‥‥。」


顔を上げ、


「私も大佐の言うとおりだと思うのです。

いえ、まさにそのとおりと言うべきです。」


「どういう意味だ?」


その眼差しは先程の大佐と同じ。

何の迷いもなく自信に満ち溢れた目。


「私はある組織に所属しています。

その組織の仲間からある情報を聞きました。」


「その情報とは?」


「イギリスの日本爆撃計画。」


「な、何だと‥‥?」


一度頷き、さらに話を続ける。


「そうです。

大佐が来る3日前に、韓国に派遣した我々の調査部隊からの情報なのですが、韓国イギリス領にミサイルボットを搭載したガイノスが無数確認されました。

日本に知られないよう、韓国の廃棄された化学工事で。」


韓国は2078年イギリスの手によって占領された。

韓国に同盟を申し出たイギリスだが、韓国はそれを断る決断をした。

その結果、韓国本土にガイノス部隊を送りつけ、これを占領した。

韓国に住んでいる住人は今では、韓国人よも英国人の方が多くなっている。

ここで何かに気付いたかのように大佐が、


「ならばなぜそのことをみんなに知らせない!?」


たしかにそうだ。

母国が危険にさらされているということを知っておきながら、なぜ何もしないのか。


「それは‥‥‥‥。」


大佐の目を見上げる。


「我々が極秘組織だからです。」










ドンッッ!!










突然激しい揺れがアゲハ達を襲った。


何かが爆発したような音があちらこちらから聞こえてくる。


「何だ!?これは!!」


先程の揺れに反射的に反応した大佐は、アゲハを守るような形で、自らからの腕の中に包み込んだ。


「わ、わかりませんっ。

てすがここは地下1階です!!

地下にまで響くということは地震の確率が高いですが、今だに音が止まないのはおかしいすぎます!!」


まだ止まない爆発音。

自分の腕の中に包み込んだアゲハは「きゃぁ!」とか、「いやぁ」などと叫んでいる。

そんな中。一人冷静にいる大佐。

鳴り響く音に耳を傾けている。


「アゲハ、この上には何がある?」


落ち着いた口調でアゲハに聞いた。


「この上ですか?

この上には、日本空軍が管理している『夜宵学院』が建っています。

ですが、それと何の関係があるのですか?」


バンッ!


「っち!イギリス軍め‥‥‥!」


アゲハを包み込んでいた大佐の右手が横の壁を叩いた。

ビクッ、と驚くアゲハ。


「どうか‥‥したんですか?」


今アゲハと大佐の距離はかなり狭い。

狭いというより密着している。

そんな中顔と顔の距離はかなり近い。

しかしこのような状況下、そんな事を考えてる訳がない。


「ふんっ、日本と言う国は本当に平和な国だな。

爆撃の音さえ知らないとは‥‥‥。」


「ばっ、爆撃?!」


アゲハを包み込んでいた手を離し、今度は両手をひっぱって立ち上がらす。


「今でも鳴りつづけているこの音って、爆撃の音なんですか?!

でもそしたらっ‥‥‥。」


後の言葉は出てこない。

アゲハ自身言いたくないだけなのかもしれない。

ここは地下1階。

そんなに被害はなく、ただ耳を容赦なく痛ぶる爆撃音のみ。

しかし、その上には何があるのかと言えば、


「あぁ‥‥。」


聞こえてくる音。

その音が暗示していること、それは、


「学院はほぼ崩壊的な被害を受けている。」


アゲハ達のいるその上には、そう。

『夜宵学院』が建ってある。

もしこの音が本当に大佐の言うように、爆撃音だとしたら、学院は間違いなく崩壊している。


「とにかくっ!

すぐに安全な場所まで避難しよう。

考えるのはそれからだ!」


アゲハの手を握り、どちらの方に進むべきか迷う大佐。


「おい!アゲハ!

早く避難通路を探そうっ!」


「は、はいっ!

確かこっち側にあったと思います!」


「よしっ!!行こうっ!!」


アゲハを引っ張って前を走る大佐。


「そういえば!

私まだ大佐の名前きいてません!!」


走りながら大佐に質問。


「教えて下さい!大佐っ!」


そういうと、アゲハの方を振り向いて、


「特殊強襲空軍部隊ラスティ・アーシュネビル大佐だ!

あらためて以後よろしく頼む!!」


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