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影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


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第二部 第31話―均衡を盗む者

広間に沈黙が落ちた。

ルナの涙は静かに浮かび、青い光を脈打たせている。

まるで問いかけるように、選ばれるのを待つように。


「アルト……」

ファントムが低く呼びかける。その声には焦燥と期待が入り混じっていた。


ドレイヴンは腕を組み、険しい眼差しを向ける。

「均衡を守る使命を知りながら、その力をどうするつもりだ。

 答えを誤れば、この星も、宇宙も崩壊するぞ。」


アルトは静かに歩を進め、結晶に手を伸ばす。

指先が触れた瞬間、再び青い波紋が広間を包み込んだ。


――視界の奥に、いくつもの未来が流れ込んでくる。

涙を使い戦争を止める未来。

涙を封じ、争いを拒絶する未来。

涙を奪い、すべてを独占する未来。


そのすべてを見届けたアルトは、小さく笑った。


「怪盗に必要なのは、どれかを選んで捧げることじゃない。

 未来を“盗んで”、隠しておくことさ。」


結晶が一層強く光を放ち、アルトの掌に吸い込まれるように消えた。


「なっ……!?」

ドレイヴンが目を見開く。

「結晶を――次元の狭間に隠したのか……!」


アルトは肩を竦めた。

「俺の手にはもうない。未来を縛る誰の手にも渡さない。

 だから安心しろ、“均衡”は俺が盗んで守る。」


ファントムは静かに息をついた。

「……お前らしいな。正義でも悪でもなく、ただ盗賊としての答えか。」


だがその瞬間、広間の奥から黒い靄が立ち上った。

虚空の花の残滓――いや、もっと深い、宇宙そのものの裂け目だった。


「……まだ終わらせてくれそうにないな。」

アルトは苦笑し、靄の向こうに視線を向ける。


そこから姿を現したのは、無数の瞳を持つ“深淵の意志”の化身。

忘れ去られた契約の裏側――涙を奪わんとする存在そのものだった。


ドレイヴンは剣を構える。

「試されているぞ、アルト。お前の“盗み”が真実かどうかを。」


アルトは黒い影を見据え、口元に笑みを浮かべた。

「上等だ。俺の答えは盗まれたりしない。」


そして、影と光の最終戦が幕を開ける――。

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