第二部 第30話―契約の記録
アルトの指先が青と黒の結晶に触れた瞬間、空気が震えた。
重力が消え、視界が白い奔流に塗り潰される。
――そして、気づけば彼はどこかの大地に立っていた。
空は裂け、光と闇がぶつかり合う戦場。
そこには、人類と――人ではない存在が剣を交えていた。
「これが……契約の記録……?」
アルトは呟いた。
声が応えた。
「そうだ。これは太古の“真実”だ。」
隣に立つのはファントム。彼女もまた記録に引き込まれていた。
戦場の中央に、ひときわ輝く青い結晶が掲げられている。
その前に立つのは、人類の王。
そして対峙するのは、漆黒の翼を持つ異星の王だった。
王は叫んだ。
『これ以上の争いは無益だ! 我らは“涙”を分かち合い、共に未来を紡ぐ!』
翼を持つ王もまた頷く。
『ならば契約を。お前たちの子孫と、我らの記憶を結ぶ架け橋として。』
二人の王が結晶に手を触れると、まばゆい光が大地を包んだ。
その瞬間、戦は終わり、静寂が訪れる。
ファントムが目を見開いた。
「これが……“涙”の起源……。異星との契約……」
アルトは額に汗を滲ませながらも、記録の奥に流れる声を聴いた。
『選ばれし者よ。契約は繰り返される。
だが忘れるな――涙は力のためではなく、均衡のために在る。』
景色が崩れ、再び光に飲み込まれる。
気づけば三人は元の広間に立っていた。
ルナの涙は静かに漂い、まるで選択を待つかのように輝いている。
ドレイヴンは深く息を吐いた。
「……やはり、記録はお前に示されたか、アルト。」
ファントムはアルトの横顔を見つめる。
「均衡のため……私たちに課せられた使命は、力を争うことじゃない。」
アルトは結晶を見据え、低く呟いた。
「なら、俺が盗むべきものは決まったな。」
彼の眼差しに宿るのは、未来そのものだった。
――物語は、真の契約の行方へと進んでいく。




