第二部 第27話―交錯する思惑ー
月明かりに照らされた廃墟の広間。
アルトとファントムは背中合わせに立ち、迫り来る黒衣の追っ手たちを睨みつけていた。
「……随分と手際のいい連中だな」
アルトは短剣をくるりと回し、声を低くした。
「組織の犬よ。私を取り戻しに来た」
ファントムの声音は冷たくも、どこか懐かしさを帯びている。
その言葉にアルトは眉をひそめた。
「やっぱりか……お前の過去に関わる連中か」
答える代わりにファントムはナイフを指先で弾き、闇の中へ投げ放った。
鋭い悲鳴とともに、一人が崩れ落ちる。
「今は語っている暇はない。生き延びたければ、斬り抜けるしかない」
二人は呼吸を合わせるように動いた。
アルトの剣閃が敵の武器をはじき飛ばし、ファントムの身のこなしが背後の死角を埋める。
互いに信じきれていないはずなのに、その連携は驚くほど自然だった。
――だが、敵の波は止まらない。
壁を破って現れた影の一団が、淡く青く光る宝珠を掲げていた。
その瞬間、ファントムの瞳が鋭く見開かれる。
「……ルナの涙の模造品!? こんなものまで……!」
青白い光が広間を覆い、重力がねじれるような感覚が走る。
アルトの足元の石床が浮かび上がり、視界が歪む。
「くそっ、これは……!」
「時間を稼がれる前に、奪い取る!」
ファントムは躊躇なく前へ躍り出た。
アルトは思わず彼女の背に叫ぶ。
「待て、突っ込みすぎだ!」
しかし、その声は青い閃光に飲み込まれた。
広間が崩れ、空間そのものが裂けるかのように、二人と追っ手は別の場所へと弾き飛ばされていった。
――その先に待ち受けるのは、ファントムの過去の真実か、それともルナの涙の本当の力か。
物語はさらに深い闇の中へと沈み込んでいく。




