第二部 第26話―契約の継承戦 ― 第3章 星々の墓標
光の扉を抜けた瞬間、アルトの視界は星の海に包まれた。
だがそこは、ただの宇宙ではなかった。
空間に無数の「残骸」が漂っていたのだ。砕けた都市、折れた塔、燃え尽きた大地の欠片――。
「……ここは……」
セシリアが息を呑む。
エリシアは静かに答えた。
「ここは“星々の墓標”。かつて、我らと人類が共に戦った戦場の跡です。」
ファントムの瞳が細められる。
「戦った? 何と……いや、誰とだ?」
エリシアは胸の前で手を組み、虚空に漂う光の粒子を示した。
「“影”です。影は最初から存在していたのではありません。契約が生まれたとき、光と共に現れた“対”の存在。それは均衡をもたらすはずでしたが……やがて均衡を越え、世界そのものを喰らおうとした。」
アルトは残骸に視線を向け、胸の奥に重みを感じる。
「つまり……ここは、過去の“敗北”の跡か。」
エリシアは頷いた。
「はい。そして影は滅びきらず、再び地球に根を張ろうとしている。」
その時だった。
虚空の闇から黒い稲光が奔り、残骸の一つを粉砕した。
アルトたちは思わず身構える。
――闇の中に浮かぶ、無数の「瞳」。
セシリアが震える声で呟く。
「……あれが、本体……?」
ファントムが剣を抜く。
「違う。これは“端末”だ。奴はここに自分の欠片を送り込んでいる。」
エリシアは蒼い結晶を掲げ、光を放つ。
「急ぎましょう。〈ルナの涙〉には、この墓標に眠る“記録”を開く鍵があるはずです。」
アルトは頷き、仲間と共に残骸の奥へ進む。
やがて、彼らは朽ちた宮殿の中心にたどり着いた。
そこには、巨大な石碑がそびえていた。
その表面には、無数の異星文字と――見覚えのある紋章が刻まれている。
「これ……!」
セシリアが指差す。
「アルト、お前の胸に浮かんだ紋章と同じだ!」
エリシアの顔色が変わる。
「やはり……あなたは“契約の継承者”そのものだったのですね。」
アルトは石碑に触れる。
その瞬間、蒼い光が広がり、石碑から声が流れ出した。
――“もしこの記録を継ぐ者がいるなら、聞け。我らは契約を結び、影を封じた。しかし、それは一時のものにすぎない。次の継承者は、人類と異星の双方を導き、再び契約を完成させよ。さもなくば、宇宙は影に飲み込まれるだろう。”
言葉が途切れると同時に、虚空に響く轟音。
黒い稲光が宮殿を貫き、空間全体が揺らいだ。
「……バレたか。」
ファントムが剣を構える。
エリシアの声が鋭く響く。
「来ます! 影の“核”が、こちらに!」
アルトは短剣を強く握りしめた。
石碑の光が胸の紋章と共鳴し、彼の全身に蒼い輝きが広がっていく。
「なら……俺が“契約”を盗んでやる!」
次の瞬間、宮殿の天井を突き破り、漆黒の巨影が姿を現した――。




