第二部 第20話 ―星の残響 ― 光が示す道
青白い光柱は、灰に覆われた街を越え、さらに遠い山脈の彼方へと伸びていた。
アルトとファントムは地下道を抜け、荒れ果てた城壁の上に立ってそれを見上げた。
「……見たか、アルト。あれが“涙”の眠る場所よ。」
ファントムの声は静かだったが、その瞳には決意が宿っていた。
アルトは肩をすくめる。
「目立ちすぎるな。これじゃ追っ手も呼び寄せてるようなもんだ。」
彼の言葉通り、街の広場ではすでに混乱が始まっていた。
光柱に気づいた兵士や盗賊たちが、口々に「伝説の宝が現れた」と叫び、次々と馬を走らせていた。
ファントムはマントを翻し、城壁を軽やかに飛び降りる。
「急がなければ、奪われるわ。」
「どうせ俺たち以外は“選ばれし者”じゃ反応しねえんだろ?」
アルトの皮肉を背中で受け流し、ファントムはただ前を見据えていた。
――しかし、その光を見上げる者は二人だけではなかった。
遠く離れた丘の上、白い仮面をかぶった影が立っていた。
「……ついに道標が現れたか。」
彼の声は風に溶け、誰にも届かない。
その手には、血のように赤く濁った小さな結晶が握られていた。
「選ばれし者が誰であれ、“涙”はすでに穢れている……」
ヴェイルの周囲に、黒い霧が渦を巻き始める。
――同じ頃。
街を抜けたアルトとファントムは、光柱の示す山脈の入口にたどり着いていた。
そこには古代の石門が口を開けている。
アルトが手を伸ばすと、門に刻まれた紋様が淡く輝いた。
まるで彼を歓迎するかのように。
「やっぱり……お前が“鍵”なのね。」
ファントムが呟く。
アルトは苦笑し、剣を背に戻した。
「気に入らねえ役回りだな。だが、進むしかない。」
二人は光に導かれるまま、石門の奥へと歩を進めた。
その瞬間、背後の闇に蠢く影――。
ヴェイルが静かに後を追っていた。




