第二部 第18話 ― 契約の真実 ―
虚空の回廊を抜けた先、広間の中央に浮かぶ巨大な結晶――それが〈ルナの涙〉の核だった。
青い光は静かに脈打ち、まるで心臓の鼓動のように、空間そのものを震わせている。
アルト、ファントム、セシリア、そしてセリウスはその前に立ち尽くした。
無数の光の粒が舞い、やがて結晶の内部に映像が広がっていく。
――星々が燃え上がる戦場。
地球と異星の軍勢が激しく衝突し、宇宙に幾千もの光が散った。
その中央で、人類の代表と異星の存在が向かい合っていた。
『この戦を終わらせるために――魂を共有する契約を結ぼう。』
異星の声が響く。
その瞬間、青い結晶が生まれ、二つの文明の“誓い”を記録したのだった。
『選ばれし者のみが、この記憶を解き放つ。
使命は一つ――宇宙の均衡を守り、再び同じ過ちを繰り返さぬこと。』
映像が消えると、広間は静寂に包まれた。
「……つまり、〈ルナの涙〉は戦争を終わらせるための証。」
セシリアが震える声で言う。
「そして、その記録を解読する者は……俺たち、ということか。」
アルトが結晶を見上げた。
だがその瞬間、空間が揺らぎ、黒い裂け目が広がる。
そこから現れたのは――あの「影」だった。
もはや人の形をしていない。
光を飲み込み、怨嗟を吐き出す闇の奔流。
契約に反した魂たちの残滓が、怪物のように凝縮されていた。
「……これが、“破られた契約”の代償。」
セリウスの声が重く響く。
アルトは短く息をつき、仲間たちに視線を送る。
「逃げ場はない。あれを超えなきゃ、未来は盗めない。」
ファントムが仮面の奥で笑った。
「弟子にここまで言わせるとはな……師として面目ない。」
セシリアは短剣を構え、微笑んだ。
「背中は任せて。あなたは前を行きなさい、アルト。」
影の咆哮が響く。
広間全体が震え、戦いの幕が切って落とされた。




