第二部 第15話 ― 青き結晶の審判 ―
空気が張り詰めた。
セリウスの瞳に映るのは、ただ「審判の対象」としてのアルトとファントム。
彼にとって二人は、結晶に触れる資格があるか否かを見極める存在に過ぎなかった。
「通る者と、拒まれる者……結晶は嘘をつかない」
セリウスの両手が宙に広がると、青白い光の刃が次々と生まれる。
まるで結晶そのものが形を変え、彼の武器となったようだった。
「くっ……!」
アルトは反射的に身をかわしたが、光の刃は意志を持つように軌道を変え、彼を追い詰める。
「こいつ……ただの人間じゃない……!」
ファントムは影の衣をまとい、虚空に消えるようにして背後を取ろうとする。
だが次の瞬間、セリウスは目を閉じたまま振り返り、光の槍を突き出した。
鋭い閃光が闇を貫き、ファントムの頬をかすめる。
「読まれている……?」
ファントムが目を細める。
「ルナの涙に選ばれぬ者の“迷い”は、光の影にすべて映る」
セリウスは無機質な声で言い放った。
アルトの胸がざわつく。
迷い――。
怪盗として真実を盗み続けてきた自分。
しかし今、宇宙規模の「契約」に踏み込もうとしている自分。
セリウスの言葉が、心の奥を抉るように突き刺さった。
「俺は……!」
アルトが叫び、前に踏み出す。
その瞬間、彼の手の中のオブシディアンがかすかに震え、ルナの涙の光と共鳴した。
結晶が二つの色で呼応し、回廊全体に波紋のような光が広がる。
「……なに?」
初めて、セリウスの瞳に驚愕の色が浮かんだ。
「問いも、答えも……俺は盗む!」
アルトの声が光に溶け、結晶が轟音を立てて輝いた。
青と黒の光が交わるその場で――
セリウスの審判が始まろうとしていた。




