第二部 第14話 ― 黒き使徒 ―
青い光が消えた瞬間、回廊に静寂が戻った。
しかし、そこにいた影は完全に姿を現していた。
「……なんだ、あの動き……」
アルトが息を整えながら呟く。
「普通の盗賊じゃない……」
ファントムも肩をすくめる。紫の瞳が影を見据える。
影はゆっくりとフードを外した。
その顔は冷たく、表情に感情はなかった。
しかし瞳の奥には、確かな意思が宿っていた。
「私の名はセリウス……『ルナの涙』を受け継ぐ者の監視者だ」
影は低く響く声で告げた。
「監視者……?」
アルトの眉が吊り上がる。
「選ばれし者に反応する結晶……その力を守る者だ」
ファントムが小声で説明する。
「過去に滅びた文明が残した秘密を、乱用される前に封じるのが任務……らしい」
セリウスの目は、ルナの涙の結晶を見据えている。
そしてその手がゆっくりと伸びると、結晶の光が再び青く燃え上がった。
「力を欲する者は……私を通過できない」
セリウスの声が回廊に響く。
アルトは剣を構え、間合いを詰める。
ファントムも闇の如くその横に立つ。
しかし、セリウスの動きは尋常ではなかった。
一瞬のうちに間合いを詰め、二人の前に立ちはだかる。
青い光と黒い影――
ルナの涙を巡る戦いは、さらに深淵へと沈んでいく。




