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6.天空のオルゴール ~1.序章~
月明かりが薄雲を透かし、天空の塔がその全貌を現した。その荘厳な姿は、まるで夜空に向かってそびえ立つ巨人のようだった。塔の最上階には、伝説の宝「オルフェウスのオルゴール」が隠されている。音楽家オルフェウスが最後に作り上げたこのオルゴールは、聞く者の心を操る力を持つと言われていた。
怪盗アルトは、その青い瞳を夜空に向けた。塔の最上階に向けて、緻密な計画を練る時間はすでに十分だった。彼がこのオルゴールを狙う理由は、ただその価値だけではない。オルゴールの力を悪用しようとする組織「ヘルモイラ」の暗躍を耳にしたからだった。
「力を手に入れる者が間違えば、世界そのものが狂い出す…か。」
アルトは呟き、胸ポケットから小さな設計図を取り出す。それは塔のセキュリティシステムの詳細を描いたものだった。緻密に記された防犯カメラの配置、レーザーセンサー、そして指紋認証ロック。どれも一筋縄ではいかないが、アルトにとっては挑戦こそが彼の生きる証だった。