表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/350

52.第二部 第2話 ― 海の果ての影 ―

港町を出航した小さな船は、未知の大陸を目指して大海原を進んでいた。

 潮風は穏やかで、波の音は心地よく響く。だが、アルトの胸の奥では緊張が渦を巻いていた。

 ——ルナの涙が、ときおり淡い青光を放つのだ。まるで進むべき道を指し示すように。


「……妙に静かね」

 船縁にもたれながら、セシリアが呟いた。

「嵐もなければ、鳥の影もない。まるで——」

「俺たちが“歓迎されてる”みたいだな。」

 アルトが冗談めかして言うと、ファントムは無言で空を見上げる。


 その瞬間だった。

 海の地平線に、黒い霞のようなものが揺らめいた。やがてそれは形を変え、巨大な影が海上に立ち上がる。

 塔の幻影。アルトが夜に見たビジョンと同じ、星空を貫く影が、海上に揺らめいていた。


「……見えるのか?」

「ええ、はっきりと。」セシリアが息を呑む。

 ファントムは剣に手をかけたまま、影を睨みつけた。

「“招かれている”んだろう。だが、歓迎か、あるいは——試練か。」


 やがて、影が消えると同時に海面が激しく波立った。

 船を揺らしながら、水面から現れたのは無数の黒き鳥の群れだった。

 その目は赤く光り、まるで一つの意志に操られているかのように、船へと襲いかかってくる。


「やっぱり歓迎じゃなさそうね!」

 セシリアが叫び、魔力を込めた光弾を放つ。

 ファントムは影のように舞い、剣で次々と鳥を斬り裂く。

 アルトは甲板を駆けながら、舵を操って船を翻した。


 だが、群れは尽きない。まるで塔の影そのものが生み出しているかのように、次々と湧き上がってくる。

 アルトの胸で、ルナの涙が眩いほどの光を放った。


「導いてくれってのか……なら、俺が盗むのは道筋だ!」


 結晶を掲げた瞬間、光が広がり、黒い鳥たちは一斉に悲鳴を上げて霧のように消え去った。

 海は再び静寂に包まれる。だが、その静けさは嵐の前触れに思えた。


「アルト……今のは?」

 セシリアが息を整えながら問う。

「“鍵”だ。ルナの涙は、この先にある扉を開かせたいんだろう。」

 アルトは結晶を握りしめ、遠くに霞む大陸を見据えた。


 その視線の先で、雲間から稲妻が走った。

 黒い塔の幻影が、再び一瞬だけ姿を現す。


「どうやら、本当に“試される”ようだな。」

 ファントムの低い声が、波間に溶けていった。


——そして船は、未知の大陸へと進み始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ