51.第二部 序章 ― 星々の囁き ―
夜明けの光が大地を包み、長き戦いの記憶を洗い流していく。
怪盗アルトは、深淵の問いも、ルナの涙の答えも“盗み”、それを未来へと託した。
——だがその未来は、まだ揺らぎの中にある。
数週間後。
アルトたちは辺境の小さな港町に身を潜めていた。セシリアは治療師として人々を助け、ファントムは街の外れで静かに剣を研ぎ澄ましている。
平穏と呼べる日々。しかし、心の奥底には拭いきれないざわめきがあった。
ある晩、アルトは眠れぬまま夜空を見上げていた。
そこには、青白く瞬く星々——その中にひときわ強い光を放つ星があった。
ふと、胸の奥でルナの涙が共鳴する。
「……呼んでいる?」
その瞬間、幻のように視界が揺らいだ。
見知らぬ大地、崩れ落ちる都市、そして星空を貫く巨大な塔の影。
耳元に、かすかな声が響く。
——“契約は果たされていない”
アルトは息を呑み、手にした結晶を見つめた。
彼が盗んだのは問いと答え。しかしそれはまだ序章にすぎず、宇宙規模の“契約”の一端にすぎなかったのだ。
翌朝、彼は仲間たちを集める。
「セシリア、ファントム……新しい“舞台”が見えた。俺たち、まだ終わっちゃいない。」
セシリアは静かに頷き、ファントムは淡く笑みを浮かべた。
そして彼らの視線の先には、広大な海。
その先に広がる未知の大陸、そして星々の囁きが導く新たな冒険が待っている。
アルトはマントを翻し、夜明けの空へと叫んだ。
「さあ——未来を盗みに行こう。」




