50.世界を繋ぐもの―エピローグ 黎明の誓い
戦いの余韻が去り、神殿には静かな風が吹き抜けていた。
砕け散った瓦礫の隙間から差し込む陽光は、夜明けの象徴のように温かく、
長き戦いを生き延びた者たちの肩を照らす。
アルトは、オブシディアンと「ルナの涙」を掌に掲げて見つめた。
黒と青、相反するはずの二つは、今や穏やかに共鳴している。
「……問いも答えも、もう“力”じゃない。
これは未来を紡ぐための“糸”なんだな。」
その呟きに、セシリアは微笑んだ。
「うん。ひとりで抱えるんじゃなくて……みんなで織っていくの。」
ファントムも仮面を外し、久しく見せなかった素顔を明らかにする。
「俺もようやく……止まっていた時間を、前へ進められる気がする。」
三人の間に流れる沈黙は、不安ではなく、確かな安堵に満ちていた。
やがてアルトは立ち上がり、瓦礫の上に足をかける。
「ここからが本当の始まりだ。問いも答えも盗んだんだ。
なら——その未来を、必ず守り抜く。」
遠くで鳥の声が響き、風が空を渡っていく。
その空の彼方には、まだ知らぬ脅威や、未だ解かれぬ秘密が眠っているのだろう。
だが今のアルトには、共に歩む仲間と、紡がれる未来がある。
彼は空を仰ぎ、言葉を刻むように静かに宣言した。
「怪盗アルトが盗むのは——絶望じゃない。
人々の心に、希望だ。」
夜明けの光が一層強く差し込み、彼らを照らし出した。
その姿は、新しい物語の幕開けを告げる光景のようだった。




