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影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


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47.作られた均衡― 第3話答えを欲する物

黒い影は、複数の輪郭を持つかのように揺らめきながら現れた。

 人の形をしているはずなのに、そこには顔も手足も見えず、ただ「喪失」と「飢え」を象った存在がうごめいている。


「……あれが、“答えを欲する者”か。」

 アルトは低く呟いた。


 影は声を持たない。だが心臓の鼓動のような重低音が神殿全体に響き、空気を押し潰していく。

 その圧に、ルナの涙の輝きもわずかに濁った。


「やはり……《問い》を盗んだお前に引き寄せられたのね。」

 ファントムは歯を食いしばりながら、短剣を構えた。

「“答え”を無理やり奪おうとしている……それが奴らの本質。」


 影の群れが動き出した。空間そのものを削るように、音もなく迫ってくる。


 アルトはオブシディアンを握りしめ、ルナの涙の前に立った。

「だったら……俺たちが選んでやる。」


 結晶が反応し、青と紫の光が絡み合う。

 その光はアルトとファントムを包み込み、二人の心臓の鼓動を一つに重ねた。


 ——その瞬間、神殿に幻影が広がった。


 かつて「契約」を交わした時代の情景。

 滅びゆく星を前に、手を取り合う者たち。

 その声が二人に重なって届く。


『未来は、選ばれるのではない。選び取るものだ。』


 光が爆ぜる。

 影たちはその輝きを嫌うように呻き、後退した。だが、すぐに形を増幅させ、さらに巨大な“渦”となって押し寄せる。


「アルト!」

 ファントムの声が震える。


 だがアルトは一歩も引かなかった。

「未来を盗む怪盗がいてもいいだろ。」


 オブシディアンとルナの涙が重なり、青黒い輝きが天井を突き破った。

 光は虚空を貫き、神殿の外にまで届いていく。


 影の渦が悲鳴のような音を発し、次々と砕け散っていく。

 その中心に、ただ一つ残った影があった。


 それは──仮面を持つ人影。

 ヴェイルだった。


「やはり、ここに至るか……怪盗アルト。」

 彼はゆっくりと仮面を外し、素顔を晒した。

 その顔には、アルトとよく似た輪郭が刻まれていた。


 セシリアが息を呑む。

「まさか……!」


「そうだ。俺は“もう一人のアルト”。

 問いを盗んだお前に対し、“答え”を得るために生まれた存在だ。」


 黒い影の核は、ヴェイルその人であった。

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