第204話 ## **粛清機構**
◆**兆候**
最初は、不具合だった。
信号が一秒ずれる。
ブレーキの反応が鈍る。
通信が、事故の直前だけ切れる。
偶然にしては、都合が悪すぎる。
「……来てるな」
男は、はっきり理解した。
**未来が、抵抗を始めた。**
◆**世界の自己修復**
ファントムは、地下のモニタールームで告げる。
「これは人為じゃない」
「世界そのもの?」
ゆづきが問う。
「ええ。
確率、選択、偶然――
そういう“揺らぎ”を使った排除」
一枚のグラフ。
予見者の介入地点だけ、
異様にノイズが増えている。
「彼が正確であるほど、
世界は強く歪む」
◆**名前のある装置**
ネットの奥底で、
ある単語が見つかる。
> **Ω(オメガ)プロトコル**
事故統計。
都市設計。
交通制御。
すべてが、
**“偏りを正す”ために連動している。**
◆**最初の犠牲**
信者の一人。
助かったはずの男が、
今度は別の事故で死んだ。
過去を上書きする形で。
「あれ……?」
世界は、帳尻を合わせる。
◆**連鎖**
救われた順に、
“別の死”が訪れる。
無理のない形で。
自然な確率として。
だが。
生き残る者がいる。
――予見者の近くにいた者だけ。
◆**残酷な答え**
「……なるほど」
男は、理解してしまう。
「守られてるのは、
未来じゃない」
彼自身だ。
「俺が起点だ」
◆**選択の歪み**
信者たちは、気づき始める。
「……助けてもらったのに」
「結局、意味なかったんじゃ……」
不安は、
怒りに変わる。
◆**思想の変質**
「じゃあさ」
誰かが言う。
「**予見者の近くにいれば、生き残るんだよね?**」
群れが、彼に近づく。
押し寄せる。
囲う。
◆**警告**
ゆづきが、男に言う。
「離れて」
「無理だ」
「それでも」
男は、首を振る。
「俺が離れたら、
彼らは即座に“回収”される」
――世界に。
◆**介入の限界**
ファントムが歯噛みする。
「もう、語り手の範疇じゃない」
「なら」
ゆづきは、まっすぐ言う。
「**物語を書き換える**」
◆**決断**
男は、最後に問いかける。
「……俺を、消すか?」
二人は、即答しない。
沈黙。
その間にも、
世界は確率を積み上げていく。
◆**兆し**
空に、異様な雲。
都市全域への警報。
> 《不要不急の外出を控えてください》
それは、
人に向けた言葉じゃない。
**点**に向けた通知。
◆**理解された役割**
男は、静かに笑った。
「そっか」
「俺は――
バグだ」
◆**次の選択肢**
彼を消せば、群れは壊滅。
守れば、都市が壊れる。
世界は、すでに一つを選んでいる。
明日 年内ラスト更新




