第203話 **信者**
◆**拡散**
匿名掲示板。
切り抜かれた監視映像。
――事故寸前で立ち止まる人々。
――なぜか助かったはずの命。
> 《またこの人だろ》
> 《偶然にしては多すぎる》
> 《未来が見えてるんじゃね?》
都市伝説は、
事実より速く育つ。
◆**名前**
いつの間にか、
彼はこう呼ばれていた。
> **「予見者」**
本人の知らないところで。
◆**最初の信者**
小さな部屋。
パソコンの光だけが灯る。
「……本物だ」
少女は、画面に釘付けになっていた。
事故現場。
日時。
回避行動。
全部、彼がいた場所。
「この人なら……」
彼女は、震える指でメッセージを打つ。
> 《助けてください》
送信先は、
誰にも知られていないはずのアドレス。
◆**届く声**
男は、立ち止まる。
未来視の海に、
**異物**が混じった。
「……呼ばれてる?」
初めてだ。
事故以外で、
**意志を持った未来**が、こちらを見返してくる。
◆**会合**
昼の喫茶店。
少女は、彼を見て固まった。
「……本当に……」
「静かに」
男は、周囲を確認する。
「何を望む」
◆**願い**
少女は、息を吞む。
「弟が……死にます」
一拍。
「三日後。
踏切事故です」
正確すぎる未来。
**彼が見る前に、彼女が知っている。**
◆**共鳴**
男の中で、何かが噛み合った。
「……見えるのか」
「わかるんです」
少女は泣きそうな顔で言う。
「あなたの時だけ……
未来が、はっきりする」
◆**断れない理由**
普通なら、切り捨てる。
だが。
彼女の未来線は、
**彼の介入を前提に組まれている**。
すでに、物語が始まっていた。
「……助ける」
少女は、崩れ落ちた。
◆**観測者側**
ゆづきは、画面を睨む。
「まずい」
「ええ」
ファントムも完全に理解している。
「彼を起点に、
予知が増殖してる」
◆**依存**
三日後。
弟は、生きていた。
ニュースにもならない。
だが。
少女の世界は、完全に変わった。
「次も……見えました」
「次は?」
「この街です」
少女の周りには、
同じ顔をした人間が増えていく。
救われた人。
信じ切った人。
◆**群れ**
男は、拒めなくなっていた。
彼がやめれば、
彼らは“また見える地獄”を背負う。
「……まだ来るか」
問いは、確認じゃない。
**覚悟の再演**だ。
◆**救世主の定義**
ある夜。
彼は言われる。
「あなたがいない未来は、
もう考えられない」
その言葉は、
最大の賛辞であり、
最大の呪いだった。
◆**ゆづきの警告**
屋上。
「やめて」
ゆづきは、はっきり言う。
「もう、個人じゃない」
「……それでも」
男は、静かに返す。
「見えてる以上、
俺がやるしかない」
◆**決定的なズレ**
その瞬間。
未来視に、
**白紙の場所**が現れた。
彼自身の死。
理由。
時刻。
痕跡。
すべて、未定。
「……これは」
◆**確信**
ファントムが、低く呟く。
「世界が、
彼を“処理対象”にし始めた」
◆**次の章へ**
彼の後ろには、
救われた者たち。
前には、
**世界そのもの。**
そして。
誰かが、言い始めている。
> 「選ばれた人は、
> 守られるべきだ」と。
――思想が、生まれる。




