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影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


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344/354

第203話 **信者**

◆**拡散**


 匿名掲示板。

 切り抜かれた監視映像。


 ――事故寸前で立ち止まる人々。

 ――なぜか助かったはずの命。


> 《またこの人だろ》

> 《偶然にしては多すぎる》

> 《未来が見えてるんじゃね?》


 都市伝説は、

 事実より速く育つ。


◆**名前**


 いつの間にか、

 彼はこう呼ばれていた。


> **「予見者」**


 本人の知らないところで。


◆**最初の信者**


 小さな部屋。


 パソコンの光だけが灯る。


「……本物だ」


 少女は、画面に釘付けになっていた。


 事故現場。

 日時。

 回避行動。


 全部、彼がいた場所。


「この人なら……」


 彼女は、震える指でメッセージを打つ。


> 《助けてください》


 送信先は、

 誰にも知られていないはずのアドレス。


◆**届く声**


 男は、立ち止まる。


 未来視の海に、

 **異物**が混じった。


「……呼ばれてる?」


 初めてだ。


 事故以外で、

 **意志を持った未来**が、こちらを見返してくる。


◆**会合**


 昼の喫茶店。


 少女は、彼を見て固まった。


「……本当に……」


「静かに」


 男は、周囲を確認する。


「何を望む」


◆**願い**


 少女は、息を吞む。


「弟が……死にます」


 一拍。


「三日後。

 踏切事故です」


 正確すぎる未来。


 **彼が見る前に、彼女が知っている。**


◆**共鳴**


 男の中で、何かが噛み合った。


「……見えるのか」


「わかるんです」


 少女は泣きそうな顔で言う。


「あなたの時だけ……

 未来が、はっきりする」


◆**断れない理由**


 普通なら、切り捨てる。


 だが。


 彼女の未来線は、

 **彼の介入を前提に組まれている**。


 すでに、物語が始まっていた。


「……助ける」


 少女は、崩れ落ちた。


◆**観測者側**


 ゆづきは、画面を睨む。


「まずい」


「ええ」


 ファントムも完全に理解している。


「彼を起点に、

 予知が増殖してる」


◆**依存**


 三日後。


 弟は、生きていた。


 ニュースにもならない。


 だが。


 少女の世界は、完全に変わった。


「次も……見えました」


「次は?」


「この街です」


 少女の周りには、

 同じ顔をした人間が増えていく。


 救われた人。

 信じ切った人。


◆**群れ**


 男は、拒めなくなっていた。


 彼がやめれば、

 彼らは“また見える地獄”を背負う。


「……まだ来るか」


 問いは、確認じゃない。


 **覚悟の再演**だ。


◆**救世主の定義**


 ある夜。


 彼は言われる。


「あなたがいない未来は、

 もう考えられない」


 その言葉は、

 最大の賛辞であり、

 最大の呪いだった。


◆**ゆづきの警告**


 屋上。


「やめて」


 ゆづきは、はっきり言う。


「もう、個人じゃない」


「……それでも」


 男は、静かに返す。


「見えてる以上、

 俺がやるしかない」


◆**決定的なズレ**


 その瞬間。


 未来視に、

 **白紙の場所**が現れた。


 彼自身の死。


 理由。

 時刻。

 痕跡。


 すべて、未定。


「……これは」


◆**確信**


 ファントムが、低く呟く。


「世界が、

 彼を“処理対象”にし始めた」


◆**次の章へ**


 彼の後ろには、

 救われた者たち。


 前には、

 **世界そのもの。**


 そして。


 誰かが、言い始めている。


> 「選ばれた人は、

> 守られるべきだ」と。


 ――思想が、生まれる。

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