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影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


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34/350

34.もう一人の影~2.黒い影~

黒い裂け目は、音もなく広がっていった。

建物も地面も、空気さえも吸い込まれるように崩れ、

アルト、ファントム、そしてセシリアは抗う間もなく虚無の中へと呑み込まれた。


次にアルトが目を開けた時、そこは——「何もない」場所だった。

上も下も、遠近も存在しない空間。

ただ、足元には薄く波打つ光の道が伸びている。


その道の先に、人影がひとつ。


アルト「……また、お前か」


そこに立っていたのは、映像で見た“もう一人のアルト”だった。

衣服は古代の戦装束のようで、胸元には青と紅、二つの結晶が嵌め込まれている。


もう一人のアルト「時を越えた盗人よ。ここは“契約の間”——選ばれし者だけが辿り着く場所だ」


男は静かに語り始めた。


ルナの涙と紅の結晶は、本来ひとつの存在。

太古の戦争の際、人類と異星双方の「願い」を守るため、二つに分けられた。


その力は「再構築」か「完全消去」のどちらかしか選べない。

世界を創り直すか、すべてを虚無に還すか。


最後の選択は、常に“二人”によって下される。


もう一人のアルト「……そして今、その時が再び訪れた。お前と——ファントムによって」


背後に気配を感じ、アルトは振り返る。

そこにはファントムが立っていた。

紅の結晶は淡く光り、彼の表情は静かだが、どこか諦めを含んでいた。


ファントム「俺は……消すつもりだった。全てを。

だが——お前の目を見たら、それが間違いかもしれないと思った」


セシリアが二人の間に立つ。


セシリア「未来を盗むって、そういうことでしょ? 消すんじゃなく、守るために奪う」


アルトは深く息を吸い、青い結晶を掲げた。


アルト「じゃあ、二つの力を……盗み、未来に隠す!」


次の瞬間、青と紅の光が重なり合い、

契約の間はまばゆい輝きに包まれていく。


——そして、その光の先に、新たな世界の輪郭が現れ始めた。

——まぶしさと共に、意識が浮上していく。


アルトはまるで水面から顔を出したような感覚で目を開けた。

そこは崩壊前の都市……ではない。

見慣れた建物が並びながらも、空の色は淡い瑠璃色に染まり、

空中にはゆっくりと光の粒が漂っていた。


セシリア「……ここ、どこ?」


アルト「……多分、“俺たちが作った世界”だ」


少し離れた場所で、ファントムが立っていた。

彼の持つ紅の結晶はひび割れ、もう力は失われている。


ファントム「どうやら……再構築は成功したらしいな」

「ただし、全てを元に戻したわけじゃない。

いくつかの出来事は……歴史から“盗まれた”」


その証拠に、崩壊の記憶を持っているのは三人だけだった。


街の中央広場に向かう途中、アルトは空を見上げた。

そこには小さな月のような光球が浮かび、

中心には青と紅、二色の輝きが脈動している。


セシリア「あれ……ルナの涙と紅の結晶?」


ファントム「そうだ。二つは再び一つになった。

だが……まだ“契約”は終わっていない」


ファントムの視線は、どこか遠くを見ていた。

まるで、この新しい世界のさらに外に、

何かが待ち構えていることを知っているように。


広場の噴水前に着いた時、

アルトは一瞬、視界の端に“黒い影”を見た。


それは以前の災厄の残滓なのか、

それとも別の何者か……判別できないまま、影は人混みに紛れて消えた。


アルト(まだ終わっちゃいない、ってことか)


口元に笑みを浮かべると、

彼はセシリアと並んで歩き出した。


アルト「さぁ、未来を盗みに行こう」


鐘の音が、再び新しい世界に響き渡った——。

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