表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

335/360

第194話 選択の朝


◆**誰も気づかない違和感**


 朝のニュースは、いつも通りだった。


 天気予報。

 渋滞情報。

 芸能人の結婚。


 誰も、昨夜“世界が管理から外れた”なんて言わない。


 ――いや、**言えない**。


 変化は、事件じゃない。

 爆発も、停電も、奇跡も起きていない。


 ただ一つ。


 「予定通りだった未来」が、

 ほんの少しだけ、**ずれ始めている**。


◆**ズレの兆候**


 踏切で、いつも止まっていた電車が、今日は通過した。

 忘れ物をしなかったはずの学生が、鍵を落とした。

 提出しないはずだった書類を、誰かが出した。


 どれも偶然。

 どれも誤差。


 でも、重なっていく。


◆**名を持つ未来**


 屋上の端に、あの青年が立っていた。


 ――語られなかった未来の一人。


「……世界、普通だな」


「うん」


 ゆづきは横に並ぶ。


「管理されてた時と、見た目は何も変わらない」


「じゃあ、本当に意味あったのか?」


 彼の声には、不安が混じっていた。


 ゆづきは、少し考える。


「意味は、“結果”じゃない」


 彼を見る。


「**これから、選べるかどうか**」


◆**名を与えるということ**


 彼は、しばらく黙ってから言った。


「俺は……

 本来、存在しないはずだった」


 ゆづきは首を振る。


「違う」


 そして、静かに告げた。


「**語られなかっただけ**」


 一拍。


「名前、ある?」


「……ない」


「じゃあ、つけよう」


 青年は戸惑う。


「名前って……そんな簡単に?」


「うん。簡単でいい」


 ゆづきは微笑った。


「世界だって、

 今日も簡単に間違ってるから」


◆**“選ばれた”名前**


 少し考えて、彼は言った。


「……**ミナト**で」


「意味は?」


「港」


 空を見る。


「行き先が決まってない船が、

 一度、戻ってこられる場所」


 ゆづきは、ゆっくり頷く。


「いい名前」


◆**観測者側・失敗報告**


 ――別の場所。


 無機質な空間。


『事例 No.Δ-17

 管理系崩壊原因:

 語り手の意思的介入』


『再現性:低』


『結論:

 完全な未来固定は不可能』


 誰かが、ため息のようなノイズを吐いた。


『……人間は、誤差を選ぶ』


◆**日常へ溶ける非日常**


 放課後。


 ファントムは、スマホを閉じた。


「妙な噂が出始めてる」


「どんな?」


「“最近、人生が予定通りにいかない”」


 ゆづきは、苦笑する。


「それ……元からじゃない?」


「そう」


 ファントムも笑った。


「でも、皆がそれを

 “自分の選択”だと思い始めてる」


◆**語り手の役割の変化**


「……私は、もう」


 ゆづきが言いかける。


 ファントムが、先に答えた。


「“管理する語り手”じゃない」


 目を細める。


「**迷う側の人間**」


 ゆづきは、深く息を吸った。


「それでいい」


◆**最後に残る問い**


 ミナトが、歩き出す。


「俺は……どうすればいい?」


「自由だよ」


 ゆづきは答える。


「失敗しても、

 戻ってきても、

 逃げてもいい」


 彼は振り返る。


「……また、会える?」


「もちろん」


 ゆづきは微笑む。


「この世界は、

 二度と一つの続き方しか

 許さない場所じゃないから」


◆**エピローグ前夜**


 夕焼け。


 街は、何も知らずに進む。


 でも確かに、

 “選び直せる余白”を内包した世界。


 語りは、終わらない。

 ただ、**独占されなくなった**だけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ