表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

321/350

第180話 影が消えた夜

 影のゆづきが弾けるように消えてから、数分。

 部屋には、まだ“影の痛み”の名残のような冷気が漂っていた。

 ゆづきは布団を抱え、震える声でつぶやく。

「……呼ばれたって……どこに……?」

 影の行き先は、どこなのか。

 生きているのか、壊されたのかすらわからない。

 ファントムはゆづきの肩を抱き寄せ、静かに答えた。

「影を連れ去ったのは――未来そのものの“処理システム”よ。

 第三勢力は感情を持たない。

 “未来の渋滞を解消するためだけに動く装置”みたいなものだわ」

「装置……?」

「ええ。目的はただひとつ。

 選ばれない未来を排除すること」

 その言葉に、ゆづきの心が大きくざわついた。

「だから影のゆづきは……連れていかれたの……?」

「そう。

 “あなたの未来を奪うつもりの別可能性”と判断されたのね」

「……そんなの、勝手すぎるよ!!」

 ゆづきの声が部屋に響いた。

 ファントムは、強すぎる怒りを静めるようにゆづきの背を撫でる。

「ゆづき。あなたが怒るのは正しいわ。

 でも、怒りだけじゃ影は救えない。

 取り戻す方法を、今から一緒に考えましょう」

 ゆづきは涙を拭い、小さく頷いた。

◆第三勢力の痕跡

 その時だった。

 部屋の中央──

 床に“黒い砂”がわずかに現れた。

「……これ、影の……?」

 ゆづきがそっと触れようとした瞬間。

 ——カッ。

 黒い砂が自ら浮き上がり、空中で不自然な軌跡を描いた。

 円でも、線でもない。

 認識できない形を作っては崩れ、また浮かび上がる。

「これは……第三勢力の“座標残滓ざひ”ね」

「座標……?」

「ええ。

 連れ去った影をどこに運んだのか、わずかな痕跡が残ってる」

 ファントムはその形を凝視し、眉をわずかに寄せた。

「まずいわ……」

「ま、まずいって……?」

「第三勢力が影を持ち去った場所は——

 あなたの“過去の可能性”に繋がる領域よ」

「過去……?」

「そう。未来だけでなく、

 “あなたが選ばなかった過去”まで処理し始めている」

 ぞくりと背筋を何かが這い上がった。

◆影の声が、遠くから聞こえた

 突然、部屋に淡い風が吹き抜けた。

 ゆづきの耳元で、かすかな声が震えた。

――……ゆ……づき……きて……

「影の……声……!!」

 ゆづきが勢いよく立ち上がる。

「聞こえたよ!ファントム……影が呼んでる!

 まだ消えてない! 生きてる!」

 ファントムはすぐに肩をつかみ、強く頷いた。

「ええ、行きましょう。

 第三勢力が介入する前に、影を取り戻すわ」

 床に浮いた黒い砂の軌跡がふっと光り、

 “現実では見えない扉”の輪郭を描いた。

◆選択の扉

 ファントムはゆづきの手を握る。

「いい? ゆづき。

 この扉を開けるのは簡単じゃない。

 あなたの未来と過去が混ざり合う危険な空間よ」

「それでも……影を助けに行きたい」

 ゆづきの胸の奥で、“語り手の光”が強く脈打った。

 その瞬間——

 扉が音もなく開く。

 暗闇の奥から、微かに影の泣き声が聞こえた。

――ゆづき……たすけて……

 ゆづきは迷わず一歩踏み出した。

「待ってて。必ず迎えに行くから」

 ファントムも後に続く。

「一緒に行きましょう。絶対にあなたを孤独にしない」

 二人は“選択の扉”へ消えていった。

◆その先で待つもの

 扉が閉まる直前、闇の中で何かがうごめいた。

 人の形をした“歪んだ影”が、ゆづきたちの背中を見て呟いた。

――“語り手”が……動いた……

――“影のゆづき”は……

 まだ第二段階の変異が終わっていない……

――間に合うかどうかは……

 ゆづきの選択次第……

 そして静かに闇へ溶けていっ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ