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影の盗賊(シャドウ・シーフ)  作者: A-LIGHT(I lie)


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第156話 世界の芯への降下(ディセント)

青い欠片が弾けた瞬間、世界はひっくり返った。


 ファントムとゆづきは地面を失い、上下の概念すら消え去る空白へと落ちていく。

 風も音もない。ただ、青い光の渦が二人の身体を包み、どこかへと導いていた。


 「ファントム……!」

 ゆづきの声は震えていた。

 その身体はさらに薄く、半透明へと変わり始めている。途切れそうな輪郭を、ファントムは必死に抱き寄せた。


 「大丈夫。絶対に離さないから。」


 ゆづきは弱く微笑み、目を閉じた。

 その瞬間――落下が止まった。


 


◆世界の内部構造 ――“下層サブルート”へ


 ファントムたちが降り立った場所は、世界の底……物語の“裏側”だった。


 巨大な白い柱が四方にそびえ、空間全体が淡い光の筋で満ちている。

 それはまるで無限図書館の書架のようでありながら、一本一本が「物語の法則」を支える骨組みでもあった。


 ゆづきが息を呑む。


 「ここ……ここが世界の内部……

  語り手が滅多に来ることのない、“サブルート”……」


 ファントムはゆづきを抱きかかえたまま、辺りを見渡した。


 「アルトが……ここへ私を導いたの?」


 青い欠片が、まるで返事のように柔らかな光を放つ。


 その光を受けて――

 世界の骨組みの隙間に、“青い道”が浮かび上がった。


 


◆アルトが残した道 ――“虚空に刻まれた足跡”


 ファントムは目を見開いた。


 光の道には、確かに“足跡”が刻まれていた。

 それは人が歩いた形でありながら、この世界のどの住人でもない――


 ゆづきがかすれた声で呟く。


 「これ……アルトの足跡……

  彼は一度、この世界の裏側まで降りてきて……

  “道”を作ったんだ……」


 「どうやって……?」


 「逸脱者だから。

  物語の外に出ることを選んだ彼は、

  どんな語り手よりも深く世界を理解してた。」


 ファントムは胸が締めつけられるような感覚に襲われた。


 ――アルトは、こんな孤独な場所を、一人で歩いたのか。


 青い道は、奥へ奥へと続いている。

 そのさらに先に、淡い球体のような光が脈動していた。


 ゆづきが震える指でそれを指した。


 「……あれが、“世界のコア”……

  世界の存在をまとめる核で、語り手の記憶と世界の法則が眠る場所。」


 ファントムの喉が乾く。


 「そこへ行けば、ゆづきは助かるの?」


 「……うん。でも、同時に危険。

  語り手じゃないあなたがコアに触れたら……

  存在が分解されるかもしれない。」


 ファントムは即答した。


 「構わないわ。」


 ゆづきの目が大きく開かれた。


 「ダメ! あなたまで消えたら……アルトが悲しむ……!」


 ファントムは一瞬だけ目を細めた。

 その表情は、痛みと覚悟の入り混じった大人の顔だった。


 「……アルトが悲しむのは、あなたが消えるときよ。」


 ゆづきは言葉を失った。


 そのとき――

 白い空間に、黒い染みが走った。


 


◆バグの追撃 ――“黒い修正波”


 バグの声は、空間全体に反響した。


 《世界内部への侵入を確認。

  逸脱者の残響を持つ者を最優先で消去する。》


 白い柱が黒く侵食され、世界の骨組みが腐っていく。

 黒いデータノイズが雪のように降りそそぎ、青い道の上にも影が混じる。


 ファントムはゆづきを抱きかかえたまま足を進めた。


 「急ぐわよ。バグがこの層に入ったら――世界全体が崩れる。」


 ゆづきは弱々しく頷いた。

 身体がもう半分以上、透けている。


 「……わたし、もう長く持たない……」


 「だったらなおさら行くしかないでしょ。」


 ファントムの足が速まる。

 青い道の先――世界の芯へ。


 球体は近づくほどに巨大になり、まるで胎動する心臓のように脈動していた。

 光が波紋となり、二人の身体をやさしく照らした。


 だが――その温もりの中で、ゆづきの輪郭が急激に薄くなる。


 「ファ……ントム……

  もし……わたしが完全に消えたら……

  あなたは……元の世界に……」


 ファントムはその言葉を遮った。


 「うるさい。勝手に消えるんじゃない。」


 ゆづきは涙をこぼした。


 「……ごめん……

  でも……語り手って……

  消えるときは誰も守れなくて……

  最後に一人に……なるの……」


 ファントムは立ち止まり、ゆづきの体をそっと抱きしめた。


 「……じゃあ私があなたの“外側”にいる。

  一人にはさせない。」


 ゆづきの肩が震えた。


 そのときだった。


 


◆コアが反応した――“ファントムへの認証”


 青い欠片がひときわ強く光り、

 世界の芯が柔らかな音を立てて開き始める。


 ――まるで“ファントムを認めた”かのように。


 ゆづきが驚愕の声を漏らす。


 「コアが……あなたを受け入れてる……?

  こんなの……前例が……ない……!」


 ファントムは青い光の中で目を細めた。


 「アルト……あなた……

  私に、一体何をしたの……?」


 答えは、まだ返ってこない。


 しかし――

 青い道は確かに、ファントムとゆづきを奥へと誘っている。


 世界の芯が、二人を待っている。


 そして、バグの黒い影はすぐそこまで迫っていた。


 世界の存続と、ゆづきの命運を決める“核心”へ――

 二人はついに足を踏み入れる。

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