第57話 蒼と黒の激突
黒い衝撃波が奔流のように広がり、広場の建物の壁を次々と砕いた。
瓦礫が降り注ぐ中、セシリアは必死に結界を張り巡らせ、市民を包み込むように光の防壁を展開した。
「これ以上は……持たない……!」
彼女の額に汗が滲み、声が震える。
その前に飛び出したのはヴェイルだった。
「なら、時間を稼ぐ! アルト、やれるか?」
「ああ――!」
アルトの剣に青い光が奔り、蒼炎が刃を覆った。
対する刺客のリグレイターは脈動を強め、黒き羽根が広がり、槍のような形を繰り出す。
次の瞬間、蒼と黒の光が火花を散らし、広場の中央で激突した。
轟音とともに石畳が崩れ、衝撃波が四方八方へ弾ける。
ヴェイルはその隙を狙って炎の刃を振り抜いた。
「燃えろォッ!」
紅蓮の斬撃が黒い羽根を裂き、一瞬だけ敵の装甲が露わになる。
だが男は嘲るように笑った。
『悪くはない。だが……所詮は欠片の一端。完全な結晶の前では塵に過ぎん!』
再びリグレイターが光を放ち、黒い槍が数本、雨のように降り注ぐ。
ヴェイルが一歩遅れ、肩を裂かれ血を散らす。
「ぐっ……!」
「ヴェイル!」
アルトの叫びが響く。
だが彼は歯を食いしばって笑った。
「気にすんな! お前は突っ込め! ここで倒さなきゃ、この街ごと呑まれるぞ!」
アルトは剣を握り直した。
胸の欠片が脈動し、痛みと共に光が強まる。
青炎が吹き荒れ、彼の背後に幻の翼のような光が広がった。
「……なら、ここで終わらせる!」
蒼炎をまとった剣が、黒き装置へ一直線に突き出される。
広場は蒼と黒の光で満たされ、空間そのものが裂けていった――。