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第55話 「暴走の器」

 黒い刃が空を裂き、アルトの目前へ迫った。

 少年を庇うように身をかがめると、青い欠片が鋭く光を放ち、瞬間的に防壁を展開する。

 激突の衝撃が広場全体に波紋を広げ、石畳が砕けた。


「アルト!」

 セシリアの結界が広がり、逃げ遅れた人々を守る。だが、彼女の顔は苦痛に歪んでいた。

「光が……強すぎる! この子の中の力、抑えきれない!」


 少年の瞳は虚ろに染まり、体から吹き出す青白い炎が噴水を蒸発させていく。

 その様子を眺めながら、刺客は不気味に笑った。


『見ろ……これが“媒介”の力だ。欠片は持ち主を選ばない。ただ器が耐えられるかどうか、それだけの話よ』


 ヴェイルが怒声を上げ、剣を振り下ろす。

「黙れッ!」

 炎が唸りを上げて刺客を包むが、黒い装置がすべてを吸収し、まるで無効化したかのように消し去った。


「……やっぱり、ただの兵器じゃねぇな」

 ヴェイルの額に汗がにじむ。


 アルトは必死に少年の手を握り、青い光を欠片に重ねる。

「聞こえるか……? お前の心臓はまだ動いてる。暴走に呑まれるな!」


 すると一瞬、少年の目がアルトを映した。

 だが直後、黒い装置から伸びた鎖が少年の身体を絡め取り、無理やり引き上げようとする。


『媒介は頂く。この力をもって、街ごと葬り去ってやろう』


 群衆の悲鳴が広場に響き渡る。

 セシリアは震える手で結界をさらに強め、声を張り上げた。

「アルト、時間がない! その子を欠片ごと切り離すしか――!」


「ふざけるな!」

 アルトの声が怒りに震える。

「俺は……見捨てない!」


 青い光が一際強く輝き、アルトの胸の欠片と少年の暴走する光が共鳴した。

 その瞬間、刺客の黒い装置にひびが走る。


『……なに? 想定外……だと?』


 ヴェイルがその隙を見逃さず、炎の刃を叩き込む。

 黒い外套が燃え上がり、刺客は舌打ちを残して後退した。


「アルト! 今だ、繋げ!」

 セシリアの叫びに応じ、アルトは欠片を少年の胸へ押し当てた。


 青白い光が一気に収束し、少年の身体から黒い鎖が砕け散る。

 轟音とともに広場を包んだ光は、やがて静かに消えていった。


 荒い息を吐きながら、アルトは少年を抱きとめる。

 その瞳は安堵に満ち、確かに生きていた。


 だが――

 瓦礫の向こうから、まだ刺客の気配が消えていない。

 黒い装置は傷を負いながらも、なお不気味に脈動を続けていた。

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