表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/206

第54話「市場の罠」

翌日、陽光に包まれた街の市場は、朝から活気にあふれていた。

 露店には果物や香辛料、布地や装飾品が並び、人々の声と笑いがあちこちから響く。

 一見すれば、昨日の不穏な影など存在しなかったかのようだった。


 だが――アルトたちの目には、広場全体を覆う「ざわめき」の奥に潜む異質な気配が感じ取れていた。


 セシリアが囁く。

「結界に反応がある……でも、場所を絞れない。市場全体に紛れてる」


 ヴェイルは人混みを見渡しながら口をゆがめた。

「この混雑だ。敵が暴れれば、真っ先に被害を受けるのは市民だぜ」


 アルトは胸の欠片を押さえた。微かな痛みとともに、青い光が市場の中心――噴水のある広場へと導く。

「……あそこだ。奴らは、広場で仕掛けてくる」


 三人は視線を交わし、雑踏の中を進んだ。


 その時、噴水の縁に座っていた少年が、ふいに苦しそうに胸を押さえた。

 次の瞬間、青白い光が彼の身体から吹き出し、周囲の人々が悲鳴を上げて後退する。


「まさか……!」

セシリアが目を見開いた。

「欠片の影響が、市民にまで……!」


 少年の背後から、昨日の刺客が姿を現した。

黒い外套を翻し、手にした装置を少年へ向けると、光はまるで吸い込まれるように渦を巻いた。


『……なるほど。やはり欠片は“媒介”を選ぶ。ならば、この街ごと実験場にしてやろう』


 その声に、周囲の人々が一斉に逃げ出す。市場はたちまち混乱に包まれた。


 ヴェイルが舌打ちして剣を抜く。

「クソッ……こんなとこで暴れやがって!」


 アルトは少年に駆け寄り、欠片をかざした。

「セシリア、結界で少年を守れ! ヴェイル、敵を引き離せ!」


「了解!」

「任せろ!」


 三人の動きが噴水広場を中心に展開する。

セシリアが結界を展開し、光を暴走から守る。

ヴェイルは炎の剣を振り、刺客の注意を引く。

アルトは欠片を少年の胸に重ね、自らの鼓動で暴走を抑え込もうとした。


 だがその瞬間、刺客の装置から黒い刃が放たれ、一直線にアルトへと迫る。


「アルト!」

セシリアの叫びが響いた。


 市場全体が震える中、青と黒の光が交錯し――新たな戦いが幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ