第49話「青い光の日常」
アルト、セシリア、ヴェイルの三人は、戦いの余韻を胸に抱きながらも、平穏な日々を取り戻していた。
欠片の青い光は、胸元で静かに脈動し、時折微かな暖かさをもたらす。
街の広場では、子どもたちが無邪気に走り回り、路地では市場の呼び声が響く。
三人はそんな日常の風景を眺めながら歩いていた。
「……不思議ね。戦いの後なのに、世界は何も変わらない」
セシリアがつぶやく。目の奥には、少しだけ切なさと安堵が混ざっていた。
「変わったのは、俺たちの心だけだ」
アルトは微笑み、胸の欠片を軽く押す。
「以前なら、この光に圧倒されていたかもしれない。でも今は……力を制御できる」
ヴェイルは両手をポケットに入れ、肩を揺らしながら笑った。
「俺たちが戦ったのは、ただ敵だけじゃなかった。自分自身の影と、未来への不安とも戦ったんだ」
広場の一角で、小さな子どもが転んで泣いている。
アルトは自然に駆け寄り、手を差し伸べる。
欠片の光が微かに強まり、子どもの涙を拭う手元を優しく照らした。
「大丈夫だよ。ほら、立てる」
子どもは笑顔を取り戻し、アルトに小さく頭を下げる。
その姿に、アルトは胸の奥が温かくなるのを感じた。
「こういう瞬間を守るために……戦ったんだな」
セシリアの声は静かだが、力強さを帯びていた。
「……そして、まだこれからも守り続ける」
ヴェイルが二人に目を向け、ゆっくりと頷く。
三人の心にある決意は、戦いの影を越えて、確かな光として根付いていた。
夕暮れの空が街を柔らかく染める頃、三人は広場のベンチに座り、青い光を胸に感じながら穏やかな時を過ごした。
戦いの傷は消えなくとも、欠片の力と絆が彼らを支え、未来を照らしている――そんな日常が、ゆっくりと流れていた。