第47話「蒼の余韻」
あの日の戦いから、しばらくの時が流れた。
街は静かで、人々の笑顔が戻り、世界には平穏が広がっていた。
アルトは欠片を胸元に収め、街の高台から町並みを見下ろしていた。
戦いの痛みは完全には消えなかったが、それはもう恐怖ではなく、守るべきものを知った証だった。
セシリアが静かに隣に立つ。
「アルト……あの時、あなたが決意を選んでくれたおかげで、私たちはここにいる」
柔らかい笑顔が、彼の心に静かな光を灯す。
ヴェイルも後ろから二人を見つめ、微笑む。
「欠片の力は確かに大きかった。でも、結局勝ったのは、お前たちの心だ」
三人はしばらく沈黙の中で、世界の平穏を噛み締めた。
風が髪を揺らし、空には淡い青の光が揺らめいていた――ルナの涙の余韻。
アルトは深呼吸し、空を見上げる。
「俺たちの戦いは終わった……でも、守るべき未来はまだ続く」
セシリアが小さく頷き、ヴェイルも拳を握った。
三人の影が長く伸び、光と闇が静かに交わる。
それは、戦いを乗り越えた者だけが得られる、静かで確かな安堵の瞬間だった。
やがて三人は並んで歩き出す。
欠片はまだ胸で光を放ち、しかしその光はもはや脅威ではなく、希望の象徴となっていた。
街を抜け、青空の下、三人の歩みは未来へと続く。
戦いの傷跡も、失われたものも、すべてが彼らを強くし、そして結びつけた。
蒼の余韻を背に、彼らの新たな物語は、静かに、しかし確かに始まったのだった。