第44話「欠片が示す本質」
青白い光の渦は街を照らし、影を呼ぶ者の闇を押し返していた。
しかし、闇の中から次々と黒い触手が現れ、三人の足元を締めつける。
「……くっ、油断できない!」
ヴェイルは炎の双剣を振り回し、触手を切り裂く。
セシリアは杖を天に掲げ、祈りを込めた光の壁で仲間を守る。
アルトは胸の欠片を強く握り、蒼炎の剣を触手に振り下ろした。
その瞬間、胸の欠片が激しく脈動し、光が三人の体を包む。
アルトの耳元に、かすかな声が響いた。
『お前たちの覚悟は……“代償”を受け入れる力。これこそが、欠片の本質だ』
「……本質?」
アルトは息を整えながら問いかける。
光が胸の奥で跳ねるように疼き、痛みと力が同時に襲ってきた。
セシリアも理解したように頷く。
「欠片は力だけでなく、覚悟を問うのね……。失うことを恐れず、守る意志を持つ者にのみ、その力は与えられる」
ヴェイルは剣を構え直し、炎を強く燃やす。
「つまり……俺たちが絆を信じて戦う限り、欠片は敵の力すら超えられるってことか」
影を呼ぶ者が冷笑する。
「ふふ……なるほど。力を与えるだけでなく、試すのか。確かにお前たちは面白い」
三人は互いに視線を交わし、胸の欠片の光を意識しながら前に進む。
光と炎と祈りが合わさり、渦巻く闇を切り裂き、街を覆う闇の支配を徐々に押し返していく。
アルトは剣を高く掲げ、蒼炎を最大に燃え上がらせた。
「俺たちは、守るために戦う。代償が何だろうと……関係ない!」
セシリアとヴェイルも一斉に力を込める。
三つの意志が一つになった瞬間、胸の欠片が光を爆発させ、闇を一瞬にして裂いた。
影を呼ぶ者は後退し、空中で身を翻す。
「……なるほど、覚悟と絆の力か。だが、この試練は……まだ終わらぬ!」
闇の力が新たに渦巻き、三人の前にさらに巨大な影が姿を現す。
その影は影を呼ぶ者そのものであり、しかし何かが違う――内側から赤黒い炎と青白い光が同時に渦巻いていた。
アルトは胸の欠片を強く握り直す。
「来い……俺たちは、最後まで負けない!」
三人の意志と欠片の光が交錯し、再び蒼炎が空間を満たす――