第43話「影を呼ぶ者の狙い」
夜の街を覆う闇の中、三人は互いの背を守るように円陣を組む。
青白い光、炎、そしてセシリアの祈りが渦巻き、闇の触手を退けていた。
『フフ……よく耐えたな、選ばれし者たちよ』
影を呼ぶ者の声は、闇の奥から響き渡る。
その声には冷たく計算された意志が宿っていた。
「奴……ただの下級の影使いじゃないな」
ヴェイルは息を整え、炎を掌に集める。
「力の規模が半端じゃない。欠片の力を知ってる……いや、追ってきたんだ」
アルトは胸の欠片を握り、強い決意を胸に抱く。
「……奴の狙いはわかる。ルナの涙の欠片だ。俺たちを倒して、力を奪うつもりだ」
セシリアは杖を握り直し、祈りの声を深く響かせる。
「それでも……私たちには仲間がいる。信じる心がある限り、欠片は私たちの力になる」
影を呼ぶ者がゆっくりと姿を現す。
黒いマントの下から、血色の瞳が赤く輝き、鋭い刃のような手が三人に向けられた。
「なるほど……そうか。お前たちは“欠片の力”を恐れず、受け入れたか」
アルトは剣を構え、光を剣先に集中させる。
「恐れてなんかいない。代償を知っても、守るべきものを選んだだけだ」
セシリアの杖が輝き、祈りの光が触手に触れる。
ヴェイルの炎が炎の竜巻となって、闇の触手を焼き尽くす。
影を呼ぶ者は唇をわずかに歪めた。
「なるほど……力の源は“信念”か。面白い……では試すがいい。お前たちの絆と意志を、完全に引き裂いてみせよう」
闇の力が街全体を包み、建物の影が生き物のように蠢く。
三人は互いに視線を交わし、息を合わせる。
「絶対に負けない――一緒に行くぞ!」
蒼炎の剣、白光の祈り、そして炎の双剣が一つに絡み、渦巻く闇に斬り込む。
影を呼ぶ者は冷笑しながら、闇を操り返す。
その戦いは、力と信念、代償と覚悟のすべてがぶつかり合うものだった。
アルトの胸の欠片が痛みを放ちながらも、光を増していく。
それはただの力ではなく、彼らの絆と覚悟を具現化する証だった。
街の上空に、青白い光の渦が巻き上がる――。