表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/206

第40話「ルナの涙の真実」

試練の広間を抜けた先に、三人はついに最後の扉の前に立った。

 扉には、淡く青白い光が流れ、先ほどの欠片の光と共鳴している。


「ここが……すべての答えの場所か」

 アルトは剣を握り、深く息を吸い込む。胸の欠片が痛みを伴いながら脈打ち、力を与える感覚が全身に走った。


 セシリアは手をアルトの腕に添え、静かに言った。

「私たち、ここまで来た。恐れずに真実を見よう」


 ヴェイルも頷き、剣の柄を握り直す。

「全てを知る覚悟があるなら……進むしかない」


 三人が扉に触れると、光が一瞬強く跳ね、意識がふっと浮いた。

 目を開けると、そこは青い光に満ちた空間――まるで時間も場所も溶けたかのような異界だった。


 中央に浮かぶのは、一片のルナの涙――欠片ではなく、完全な青い結晶。

 光は穏やかで美しいが、胸の奥に静かに重くのしかかる感覚がある。

 欠片を通じて感じた代償の全貌が、まざまざと三人の前に現れたのだ。


『私は、光と闇の均衡を司る存在……選ばれし者の心に応じて力を与え、同時に魂の一部を奪う』

 空間に響く声は柔らかく、しかし冷徹だった。

 アルトは胸の欠片を抱きしめる。


「つまり……力を得るたびに、俺たちは何かを失ってきたのか……」

 痛みの正体が、代償として己の記憶や感情、失った者への後悔を反映していたことを理解する。


 セシリアは青い光を見つめ、静かに言った。

「でも……私たちが選んだのは、この道。恐れずに進む覚悟も一緒に選んだ」


 ヴェイルも言葉を重ねる。

「代償を受け入れること……それこそが力を真に使う条件だったんだな」


 ルナの涙が淡く振動し、三人の心に問いかける。

『覚悟を持って、私の力を完全に受け入れるか――?』


 アルトは深く息を吸い、胸の欠片を光にかざした。

「……受け入れる」


 セシリアも祈るように手をかざし、ヴェイルも剣を突き出す。

 三人の意志が一つに束ねられると、ルナの涙は完全な光を放ち、三人を包み込んだ。


 その瞬間、代償としての痛みが強烈に走る。

 しかし、光の力と共鳴し、心の深奥にあった迷いや後悔が浄化される感覚――痛みは消えずとも、希望に変わる。


『よくぞ、覚悟を持った。これが、選ばれし者の力の真実――』


 三人は静かに目を開け、互いの顔を見た。

 そこには恐怖も迷いもなく、ただ確かな決意と絆があった。


 光が収まると、ルナの涙は欠片として三人の前に舞い降りる。

 完全なる力と、代償の記憶――それを胸に、三人は新たな試練へと歩み出す準備を整えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ