第37話「蒼炎の一閃」
青と赤、そして白――三つの力が剣に収束し、蒼炎となって燃え上がった。
その輝きは漆黒の空間を切り裂き、影の王の纏う闇をわずかに押し返す。
『ほう……面白い』
影の王の紅い瞳が愉悦に細められる。
巨大な闇の刃が振り下ろされる瞬間、アルトは渾身の力で剣を振り上げた。
「――蒼炎斬!」
轟音とともに、蒼炎の剣と漆黒の刃がぶつかり合う。
衝突の瞬間、空間そのものが砕け散るような衝撃が走り、三人の身体は大地から浮き上がった。
「くっ……まだだ!」
アルトの腕に力が宿る。セシリアは祈りの声を重ね、ヴェイルは炎をさらに注ぎ込む。
三人の意志が束ねられた剣は、闇の刃を押し返し――ついに、砕き散らした。
蒼炎の閃光が一直線に影の王へ走る。
その身を包んでいた漆黒の鎧が裂け、深紅の瞳がわずかに見開かれた。
『……なるほど。三つの意志をひとつに繋ぐか。だからこそ“涙”は応えたのだな』
影の王の身体から闇が散り、空間に亀裂が広がる。
しかしその表情には、敗北ではなくどこか満足げな笑みが浮かんでいた。
「まだ……終わってない……!」
アルトは剣を構えたまま膝をつく。
胸の欠片が激しく脈動し、焼けつくような痛みが全身を走った。
セシリアが駆け寄り、必死にその身体を支える。
「アルト! もうこれ以上は……!」
ヴェイルも歯を食いしばりながら影の王を睨む。
「倒せたのか……? いや、まだだな」
亀裂から溢れ出る闇が再び集まり、影の王の姿を形作る。
その声は低く響き、試練の続きを告げた。
『お前たちの力、確かに見届けた。だが――代償はこれからだ』
次の瞬間、玉座の背後に新たな扉が浮かび上がった。
その扉には「真実」と刻まれた古代文字が輝き、三人を誘うように光を放っていた。
アルトは荒い息を整えながら、その扉を見つめる。
「……あの先に、すべての答えがある」
三人は互いに目を合わせ、再び歩みを進めた。
影の王の試練は、まだ終わっていなかった。