第35話「試練の扉」
光に包まれた大地が消え去ると、三人は再び石造りの空間に立っていた。
先ほどの戦いは幻影だったのか――それとも現実だったのか。胸の奥に残る痛みと、新たに得た力が、その答えを物語っていた。
目の前には、荘厳な扉がそびえていた。
月と星が絡み合う紋章が刻まれ、中央には欠片の形に似た窪みがある。そこから淡い光が脈打ち、彼らを誘うように明滅していた。
「……ここが、真実への入口か」
アルトが欠片を手に取ると、胸の痛みが一層強く走った。
セシリアがそっと彼の腕に手を添える。
「アルト……無理をしてるんじゃない?」
「大丈夫だ。……いや、進むしかないんだ」
ヴェイルが前に出て、扉を睨む。
「どうせ開けば何かが待ってるんだろうな。守護者か、それとも……」
「影を操る“真の敵”かもしれない」
アルトの声に、三人は互いを見つめ、静かに頷き合った。
欠片を扉の窪みに嵌め込む。
次の瞬間、重厚な音を響かせて扉が開き始めた。
吹き荒れる風とともに、暗い空間が姿を現す。
そこには巨大な玉座があり、ひとりの存在がゆっくりと立ち上がった。
その姿は人影のようでありながら、同時に獣のような禍々しさを纏っていた。
深紅の瞳が三人を射抜き、声が闇を震わせる。
『ようやくここまで辿り着いたか……選ばれし者たちよ』
セシリアが息を呑む。
「あなたが……影を操る存在……?」
影の王とも呼ぶべきその存在は、不敵に笑った。
『真実を望むか……ならば証明せよ。その力が、代償を背負うに値するかどうかを――』
闇が渦を巻き、空間全体が黒い嵐に包まれていく。
アルトは剣を構え、仲間に声を放った。
「ここからが本番だ――絶対に負けない!」
三人と“影の王”との、避けられぬ最終試練が幕を開けた。