第25話「影との初戦」
広間の空気が凍りつく。
影はゆらめきながら形を変え、やがて甲冑をまとった人影の姿へと凝固した。
赤い瞳が三人を射抜き、低く響く声が広間に響き渡る。
「欠片の力……その真価、ここで試させてもらおう」
アルトは胸元の欠片を強く握りしめた。
光が掌に集まり、青白い刃のように形を変える。
「来い……お前に奪わせはしない!」
ヴェイルは剣を抜き、影に対峙する。
「アルト、力を制御しろ。セシリア、援護を頼む!」
「任せて!」
セシリアは欠片に呼応させるように祈りを込める。
彼女の手から淡い光の紋様が広がり、アルトとヴェイルの周囲に守護の輪が現れる。
影は一歩踏み出すだけで、重圧のような暗黒の波を放った。
床の紋様がひび割れ、空間全体が揺れる。
「ぐっ……!」
アルトは踏ん張りながら、光の刃を振るい、暗黒を切り裂いた。
刹那、影が瞬間移動のように背後へ回り込む。
赤い瞳がアルトの背を射抜く。
「遅い」
だが、その刃を受け止めたのはヴェイルだった。
金属が激しくぶつかり合い、火花が散る。
「まだ、速さだけなら負けん……!」
セシリアが即座に紋様を展開し、二人の背を光で覆う。
「アルト、集中して! 欠片はただの武器じゃない……心で繋がるの!」
アルトは荒い呼吸の中で目を閉じた。
浮かぶのは、これまでの旅路、失ったもの、そして守りたい仲間の姿。
――恐れるな。
欠片が応じるように輝きを増し、刃が一瞬で大きく膨れ上がる。
「はあああっ!」
アルトの一撃が影を貫き、黒い霧が爆ぜた。
だが影はすぐに再生し、不敵に笑う。
「悪くはない……だがその程度では、欠片の本当の力には届かん」
再び闇が押し寄せ、広間は光と影の戦場と化した。
三人は互いに背を預け、限界を超える戦いに挑む。