第23話「次なる試練への備え」
回廊の静寂が、三人の呼吸だけを残して広がっていた。
アルトは欠片の光を胸に抱き、ゆっくりと視線を巡らせる。
「……まだ油断はできないな」
セシリアはアルトの隣に立ち、穏やかだが確かな眼差しで言う。
「ええ。でも、私たちには時間がある。力を蓄え、準備を整えることができる」
ヴェイルは回廊の奥を見つめ、手を組む。
「影の力は確かに強い。しかし、あの光を押し返したのは俺たちの結束だ。次も同じだ」
三人は祭壇の光に照らされながら、静かに作戦を練る。
欠片の力は万能ではない。使いすぎれば心身に負荷がかかる。
だが、それをどう活かすかで勝敗が決まることも、彼らは理解していた。
「次に影が現れるときは……先手を打つべきだ」
アルトは欠片を握りしめながら、決意を口にする。
「私たちで情報を集め、敵の出方を読む。準備を怠らなければ、あの力も恐れるに足らない」
セシリアの声には、揺るぎない信念が宿っていた。
ヴェイルは鋭い目で回廊を見渡す。
「まずは欠片の力を完全に理解することだな。俺たちの意志で制御できるようになれば、戦いの幅も広がる」
三人は互いに頷き合い、歩き出す。
回廊の出口に向かう足取りは、以前よりも確かで力強い。
「行こう……次の試練の場所へ」
アルトの言葉に、セシリアとヴェイルも力強く応えた。
出口の先には、光と影の狭間に広がる未知の世界が待つ。
そこには、さらなる敵、そしてルナの涙を巡る真実が眠っている。
歩みを進める三人の背中には、欠片の光が淡く輝き続けた。
それは希望であり、試練であり、そして彼らの未来を映す光でもあった。