第20話「欠片の覚醒」
回廊に残る静寂の中、三人は互いに視線を交わした。
影は消えた――しかしその余韻は、重く、冷たい風のように体を包む。
アルトは胸元の欠片を握りしめ、心の中で問いかける。
「俺の力……本当に、皆を守れるのか?」
セシリアはそっとアルトの手に触れ、微笑む。
「あなたの意志こそが力よ。恐れないで」
ヴェイルは剣を軽く振り、回廊の奥を見据える。
「奴が何を仕掛けても、俺たちは倒せる。心を一つにすれば」
その瞬間、欠片が青白く光り始め、アルトの手から微かに振動が伝わる。
光は徐々に膨張し、三人を包み込み、周囲の空間が歪むように感じられた。
「これが……欠片の本当の力……」
アルトの瞳が光に染まり、心の中で過去の痛み、恐怖、後悔、そして希望が渦を巻く。
欠片は彼の意思に応えるかのように光を増し、周囲の影を押し返す。
すると回廊の壁面に、影の攻撃の全貌――無数の黒い渦のような力が浮かび上がる。
それは、時間と空間を歪め、すべてを飲み込もうとする力だった。
ヴェイルは唇を引き結び、鋭い声で言う。
「なるほど……これが奴の全力か。しかし、俺たちは三人だ」
セシリアも集中し、欠片の力を心で呼び込む。
「ルナの涙……私たちの意志を、力に変えて!」
アルトは深呼吸し、心を一つにする――守るべきもの、仲間、過去の自分、全てを胸に刻む。
欠片の光が頂点に達し、回廊全体を覆う白銀の波動となった。
黒い渦の影は、光の力に押し返され、たじろぐ。
しかし影は完全に消えたわけではない――その中心に、わずかに黒い形が残る。
「……まだだ。まだ序章……」
その声が闇の奥から響き、次の戦いの予兆を示した。
三人は互いに息を整え、胸の高鳴りを感じた。
アルトは欠片を握りしめ、決意を新たにする。
「どんな未来が来ようと、俺は守る……皆を!」
光の欠片は穏やかに脈動し、これから始まる試練への道標となった。