16.暁のオブシディアン ~2.黒い幻影~
夜の帳が降りた都市の片隅、アルトは静かに歩いていた。風の音すら聞こえないほどの静寂の中で、彼の足音だけが響いていた。 目的地は、古代言語の専門家であり、かつての協力者でもあるセシリア・ヴェルナンドの研究室だ。セシリアの研究室は、古びた建物の一室にひっそりと隠れている。 周囲には長い時間流れたことを感じさせる古書や巻物が積み重なっていた。 アルトはその扉を静かに開け、足を踏み入れる。 すると、闇からセシリアの声が響いた。
「久しぶりね、アルト。まさかこんな形で再会するなんて。」
セシリアは、分厚く囲まれながら、その一瞬めいた微笑を浮かべていた。彼女の目はちょっと懐かしくて心が交錯しているように見えた。アルトにとって、セシリアはただの協力者以上の存在だった。
「久しぶりだな、セシリア。」
アルトは低く答え、「暁のオブシディアン」に刻まれた古代文字の解読を依頼した。その宝石は、ただの装飾品に見えるが、その秘密は深遠だった。伝説によれば、古代の王が自らの魂を封じ、持つ者に無限の知識を授けると言われている。
「これを解いてくれ。頼む。」アルトは真剣な表情で彼女に向かって言った。 セシリアは静かな宝石を手に取り、じっと見つめる。 彼女は慎重に言葉を選びながら答えた。
「解読すれば、何かが分かる。当然、それがどんな結果を生むのかは、予測できない。」
アルト:「これを解読すれば、何かが分かるのか?」
「分かるわ。ただ……これは単なる暗号じゃない。封印に関わる言葉のようね。」
セシリアの言葉が、アルトの胸に重く響いていた。彼女の目は恐怖と興奮が入った表情で、宝石を見つめている。セシリアは慎重に文字を解析し、解読を進めた。しかし、その作業の最中、突然、アルトの拠点に警報が鳴り響いた。
「カオスグリフ……!」
謎の組織カオスグリフが、暁のオブシディアンを奪うために動き出したのだ。
銃弾が飛び交う中、アルトはなんとか応戦するが、多勢に無勢。ついに彼は宝石を奪われてしまう。しかし、間一髪のところでセシリアが解読した文書の一部を持ち出し、共に逃走することに成功した。
「これがあれば、まだ手はある。」
アルトは息を整えながら、次なる策を練る。カオスグリフの本拠地を突き止め、奪還を試みるほかない。
カオスグリフの組織の正体が明らかになりつつあった。彼らは単なる犯罪組織ではなく、長年にわたり古代の遺物を回収し、禁断の知識を手に入れようとする影の勢力だった。アルトの手にある文書の一部には、暁のオブシディアンに秘められた力の本質が記されていた。
「この宝石は、ただの知識の器ではない。……鍵なのよ。」
セシリアの言葉にアルトは眉をひそめた。鍵とは、一体何の?
「これは封印を解くためのもの。封じられているのは……おそらく、何かとてつもなく危険なものよ。」
アルトは静かに息を吐いた。これがただの宝石ならば、単純に盗み出せばよかった。しかし、今回ばかりはそうはいかない。カオスグリフに渡せば、何が解放されるのか分からないのだ。
「なら、取り返すしかないな。」
アルトは決意を固め、カオスグリフの本拠地へと足を向けた。止め、奪還を試みるほかない。