第15話「虚空の試練」
三人が扉をくぐると、そこは見渡す限りの白い空間だった。
床も天井も壁もなく、ただ無限に続く光の空間。風も音もない。
しかし、足を踏み出すと、地面が柔らかく沈む感覚があり、重力が一定ではないことを告げていた。
「……これは、心の迷宮だ」
ヴェイルは慎重に周囲を見渡す。
「足元の感覚に惑わされるな。心を信じろ」
アルトは胸元のルナの涙欠片を握りしめる。
「信じる……俺は絶対に、前に進む」
セシリアは静かに頷き、三人は手を取り合って歩き出す。
だが、空間は意志を映すかのように、次々と試練を投げかけてきた。
まず現れたのは、三人の幻影――過去に守れなかった人々の姿だった。
「アルト……あなたはまた失うの?」
「セシリア……あなたの判断で傷ついた人がいる」
「ヴェイル……信念は、本当に正しいのか?」
声は囁くように響き、幻影は三人の目の前で揺れ動く。
アルトは胸の痛みに耐えながら拳を握る。
「俺は……もう逃げない!」
すると、欠片の光が脈打ち、幻影は光に溶けるように消えていく。
「まだ……これだけじゃないな」
ヴェイルが息をつく。
次に現れたのは、空間自体の変化だった。
地面が裂け、宙に浮かぶ岩が不規則に回転する。
「これは……試されているのは、力だけじゃない」
セシリアの声には緊張が滲む。
アルトは冷静に周囲を見渡し、岩の動きを読んで跳躍する。
ヴェイルはセシリアを支えながら、三人のバランスを取り続ける。
「心の覚悟と連携が、鍵だ……!」
光の欠片は三人の心の強さに応えるように、脈動を増す。
それは、単なる試練ではなく、絆の証明でもあった。
そして空間の中心に、再び影が姿を現した。
薄紫の瞳が光を映し出し、三人を見下ろす。
「なるほど……心は揺るがぬ。だが、真の試練はここからだ」
影の言葉とともに、空間はさらに歪み、次なる試練――心の最も深い恐怖――を示す光景が広がった。
三人は互いの手を握り直し、揺るぎない決意で立ち向かう。
「俺たちは……絶対に、ここを乗り越える」
アルトの声に応えるように、セシリアとヴェイルも頷き、試練の核心へと歩を進めた。
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