第14話「試練の核心」
闇の回廊の奥に現れた扉は、光を反射することなく、ただ黒く深い影を宿していた。
三人は足を止め、互いの表情を確かめ合う。
「ここから先は……心の試練だ」
ヴェイルの声は冷静だが、内に秘める緊張が微かに震える。
アルトは胸の欠片を握りしめ、深呼吸する。
「俺たちは……絶対に、逃げない」
セシリアはアルトの肩に手を置き、優しく頷く。
「恐怖も後悔も、すべて受け入れて。そうすれば、光は必ず見える」
扉に触れた瞬間、青白い光が三人を包み込み、視界は無限の虚空に変わった。
そこには、三人それぞれの記憶が立ち上がる。
アルトには、幼いころに守れなかった人々の顔が次々に映る。
「また……失うのか……?」胸に痛みが走る。
セシリアには、過去に自分の判断で傷つけた人々の姿が浮かぶ。
「私のせいで……」涙が光に反射して散る。
ヴェイルには、自分が守れなかった仲間や、背負った信念の重みが立ちはだかる。
「俺は……本当に正しいのか……」
光の欠片が脈打ち、三人の恐怖や迷いを映し出す。
声にならない声が、心の奥から響く。
「お前たちは、何を守りたい?」
アルトは目を閉じ、胸の奥で答える。
「守る……セシリア、ヴェイル、そして仲間たち。俺たちの絆を、絶対に守る!」
セシリアも、涙をこらえながら言う。
「私も……恐れずに進む。アルトとヴェイルと共に」
ヴェイルは拳を握り、決意を声に乗せる。
「俺は信念を貫く。仲間を信じて、共に進む」
三人の意思が一つになると、欠片の光はさらに強く輝き、虚空を押し広げた。
影の正体が静かに現れ、薄紫の瞳で三人を見下ろす。
「なるほど……お前たちの心は揺るがぬか」
影は微かに笑い、光の中に消えていく。
「だが、試練はまだ始まったばかりだ……真の核心は、この先にある」
青白い光が収まり、三人は揺れる回廊の中に立っていた。
しかし、心の奥には確かな手応えが残る。
「俺たちは、前に進む――絶対に」
扉の向こう、次なる試練の空間が、三人を待ち構えている。
そこには、力だけでなく、知恵と心の覚悟が問われる、未知の試練が待っていた。